【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「デート中でしたかな?」
目元を細めて尋ねるお父さまに、わたくしはぎゅっと拳を握る。レグルスさまは緩やかに首を振って否定した。
「友人たちとディナーを楽しんでいただけですよ。なぁ、みんな?」
わたくしたちはそれぞれうなずいた。お父さまたちにバレないように深呼吸をしてから、ベネット公爵家の人たちの前に立ち、カーテシーをする。
「お初にお目にかかります。ベネット公爵さま、公爵夫人さま、小公爵さま。マーセルと申します。以後、お見知りおきを」
顔を上げて、真っ直ぐに彼らを見ると、息を呑むのがわかった。お母さまはわたくし――いえ、マーセルをマジマジと凝視すると、扇を取り出して口元を隠す。
「きみがマーセルか。マティス殿下から、いろいろ聞いているよ」
マティス殿下がなにをどう説明したかはわからないけれど……お父さまの、『マーセル』を見る瞳はとても優しかった。
わたくしを見るとき、そんなに優しいまなざしを向けられたことはない。
お兄さまも、感極まったような……そんな表情を浮かべていた。
彼の……マティス殿下の言っていたことは、本当だったのね……
お母さまだけ、鋭い視線を向けていた。
「……マティス殿下は、わたくしのことをなんと話していましたか?」
少しだけ気になって、尋ねた。すると、お父さまは「立ち話もなんだから、ラウンジに行こう」と歩き出す。
わたくしたちは顔を見合わせてから、お父さまたちについていくことにした。
目元を細めて尋ねるお父さまに、わたくしはぎゅっと拳を握る。レグルスさまは緩やかに首を振って否定した。
「友人たちとディナーを楽しんでいただけですよ。なぁ、みんな?」
わたくしたちはそれぞれうなずいた。お父さまたちにバレないように深呼吸をしてから、ベネット公爵家の人たちの前に立ち、カーテシーをする。
「お初にお目にかかります。ベネット公爵さま、公爵夫人さま、小公爵さま。マーセルと申します。以後、お見知りおきを」
顔を上げて、真っ直ぐに彼らを見ると、息を呑むのがわかった。お母さまはわたくし――いえ、マーセルをマジマジと凝視すると、扇を取り出して口元を隠す。
「きみがマーセルか。マティス殿下から、いろいろ聞いているよ」
マティス殿下がなにをどう説明したかはわからないけれど……お父さまの、『マーセル』を見る瞳はとても優しかった。
わたくしを見るとき、そんなに優しいまなざしを向けられたことはない。
お兄さまも、感極まったような……そんな表情を浮かべていた。
彼の……マティス殿下の言っていたことは、本当だったのね……
お母さまだけ、鋭い視線を向けていた。
「……マティス殿下は、わたくしのことをなんと話していましたか?」
少しだけ気になって、尋ねた。すると、お父さまは「立ち話もなんだから、ラウンジに行こう」と歩き出す。
わたくしたちは顔を見合わせてから、お父さまたちについていくことにした。