【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「食いしん坊め」
「否定はしません!」
きっぱりと断言するものだから、わたくしとクロエは声を出して笑わないようにするのが大変だった。
そして、そんな和やかな雰囲気を楽しんで、デザートまでいただいたあと――ガシャン、となにかが割れる音が耳に届く。
「な、なにかしら……?」
「別の個室から、みたいですね。なんだか騒がしくなりそうですし、部屋に向かいましょうか」
ブレンさまの提案に、わたくしたちはうなずいた。
個室を出ると、近くの個室にホテルの従業員が集まっているのが視界に入る。
必死に謝っている姿を見て、なにがあったのかしら? と首をかしげると、怒り心頭という雰囲気をまとった一人の女性が現れた。
思わず、息を呑んでしまった。だって、出てきたのはベネット公爵夫人だったから。
「……」
「……」
レグルスさまがわたくしとお母さまを交互に見て、それからお母さまに向かってにっこりと微笑みを浮かべた。
お母さまはレグルスさまのことを怪訝そうに見ていたけれど、お母さまを追いかけるように出てきたお父さまとお兄さまもわたくしたちに気付いて、お父さまが「ああ」と一言口にし、レグルスさまに愛想よく笑みを見せる。
「これはこれは、リンブルグの王太子殿。奇遇ですな」
……名前を呼ばないのは、わざとかしら?
「否定はしません!」
きっぱりと断言するものだから、わたくしとクロエは声を出して笑わないようにするのが大変だった。
そして、そんな和やかな雰囲気を楽しんで、デザートまでいただいたあと――ガシャン、となにかが割れる音が耳に届く。
「な、なにかしら……?」
「別の個室から、みたいですね。なんだか騒がしくなりそうですし、部屋に向かいましょうか」
ブレンさまの提案に、わたくしたちはうなずいた。
個室を出ると、近くの個室にホテルの従業員が集まっているのが視界に入る。
必死に謝っている姿を見て、なにがあったのかしら? と首をかしげると、怒り心頭という雰囲気をまとった一人の女性が現れた。
思わず、息を呑んでしまった。だって、出てきたのはベネット公爵夫人だったから。
「……」
「……」
レグルスさまがわたくしとお母さまを交互に見て、それからお母さまに向かってにっこりと微笑みを浮かべた。
お母さまはレグルスさまのことを怪訝そうに見ていたけれど、お母さまを追いかけるように出てきたお父さまとお兄さまもわたくしたちに気付いて、お父さまが「ああ」と一言口にし、レグルスさまに愛想よく笑みを見せる。
「これはこれは、リンブルグの王太子殿。奇遇ですな」
……名前を呼ばないのは、わざとかしら?