【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「今日はわたくしがクロエにやるわね」

 クロエが浴室まで来てバスタオルとバスローブを置くのを見て、声をかける。

「え?」
「ほら、脱いで脱いで」
「カミラさま!?」

 慌てたようなクロエの声。わたくしは気にもせずに彼女の衣服を脱がし始めた。

 クロエが着ている服って、脱がしやすくて良いわね。着るのも楽そう。

 リンブルグの服装ってどんな感じなのかしら?

 着るのも脱ぐのも楽な服だと良いなとぼんやり考える。……そして、クロエはナイスバディだった。羨ましいくらいに。

「な、なんですか、その目は!」
「なにを食べたらこんなに大きくなるのかしら……」
「目が怖いですよ、カミラさま!」

 あら、失礼、と言葉を紡ぐと、クロエは「カミラさまも脱いでください!」とわたくしの服を脱がしにかかった。

 でも、その手が止まり困惑したように「え、これどうなっているんですか!?」とパニックを起こした。……これでも簡単な服を着てきたのよ。

 マーセルの服って、自分でも着られるようなデザインが多くて助かったわ。

「貴族の令嬢が着る服って、脱がせるの大変ですね……」
「着せるのも大変そうだったわよ」

 公爵邸にいた頃を思い出して、くすりと笑う。

 わたくしの着替えに、かなりの時間をかけていたもの。

 もちろん、着替えだけが理由ではないけれど。

 髪型やメイクなんかも時間をかけていたからね。その日の天気ややるべきことによって違うのよ。

 だからこそ、学園の制服はとても楽に感じるのだけど……

 ……マーセルも結構なナイスバディね。

 じっとこちらを見つめるクロエの視線の先に気付いて、わたくしは両肩を上げた。
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