【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

友人とお風呂って、夢だったのよね。

 湯船に浸かる前にクロエを椅子に座らせて、シャワーコックを捻る。水からお湯へ変わるのを待ち、彼女の髪を濡らしていく。

 クロエの髪は柔らかいのね。全体を濡らしてから、備え付けのシャンプーのポンプを押して泡立てた。

「こんなふうに、泡立ててから髪を洗うの。爪を立てないように、指の腹を使って……」

 わしゃわしゃとマッサージするように彼女の頭を洗う。あわあわになったところで、シャワーを使って泡を流す。

 そして、もう一度シャンプーを泡立てて、彼女の頭を洗った。

「カミラさまはずっとこうやって……?」
「ええ、手入れされていたわ。自分で洗えるって言ってもね」

 肩をすくめながら口にすると、クロエは小さく笑い声を上げる。

「流すから、目を閉じてね」
「はい」

 素直に目を閉じるクロエを見て、泡を流す。しっかりと洗い流してから、トリートメントを手にして毛先を中心につけていく。

 タオルをお湯で濡らしてからしっかりと絞り、彼女の髪を包み込むように巻いた。

「五分くらいこのままよ」
「……丁寧に手入れされるんですね」
「……貴女(あなた)、いったい今までどんな髪の手入れを……?」

 わたくしがやっていることは、普通のことだと思うのだけど……?

 クロエはちょっとだけ乾いた笑いを浮かべて、教えてくれた。

「リンスインシャンプーでがーっと……」
「……よくそれで痛まなかったわね」

 クロエのきれいな髪が痛んでなくて良かったと、心底思う。

「良い? クロエ。わたくしの侍女になるのなら、髪の手入れから肌の手入れ、いろいろなことを覚えてもらうわよ」
「は、はい……!」
「そして、貴女もそれをすること」
「え?」
「髪も肌も、手を加えることによって変わるのよ。クロエ、美人なのだから、もっときれいになると思うの」
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