【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 きっちりとわたくしがやったようにやってみせる彼女に、ふふっと笑いがこぼれる。

「どうしました?」
「いえ、なんだか……マーセルの身体になったときには驚いたけれど、彼女は自由ねって思ってしまって」

 シャンプーにしても、身体を洗うことにしても、公爵令嬢というだけメイドたちに囲まれたことを思い出して眉を下げた。

 自分でもできると伝えたことがあるけれど、『公爵夫人に罰せられます』と聞いてしまえば、抵抗する気も失せる。

「さて、次は身体の洗い方よ。背中を流してあげる!」
「……カミラさま、楽しんでいませんか?」
「楽しんだもの勝ちじゃないかしら、こういうのって」

 トリートメントを洗い流してもらってから、乾いたタオルで髪を巻いてきゅっと結ぶ。

 クロエを再び座らせて、石鹸を泡立てた。

 もこもこと泡立っていくのを見て、手でクロエの身体を洗う。

「手で洗うほうが、肌には良いのよ」
「くすぐったいです……!」

 くすぐったそうに身を(よじ)って笑うクロエ。それを見て、わたくしも声を出して笑った。

 前のほうはさすがに自分で洗ってもらった。そして、わたくしも背中を流してもらい、全身をピカピカにしてから湯船に浸かる。

「……私、こんなに広いお風呂に入ったの初めてです」
「ふたりどころか、もっと大勢入っても大丈夫そうなくらい、広いわよね……」

 とろみのある乳白色のお湯。

 さっき入浴剤を入れたから、その効果なのか、肌がしっとりと保湿されている気がする。

「温泉に入るときって、こんな感じなのかしら?」
「温泉はもっと広いと思いますよ……」

 確か、リンブルグは海も良いけれど温泉も良いとなにかの雑誌で読んだことがある。
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