【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「ブレン、俺にはないのか?」
「え、殿下もほしいんですか?」

 きょとんとレグルスさまを見るブレンさまに、わたくしたちはくすくすと笑ってしまった。

 きちんとレグルスさまの分も用意していたみたいで、すっと差し出す。

 レグルスさまはパンフレットを受け取って、パラパラと中身に目を通した。

「適当に見て回りますか?」
「そうね……ゆっくり歩きたいわ。見るの、初めてだから」
「じゃあお土産屋はあとにするとして……ゆっくり歩こうか」

 レグルスさまの言葉に、こくりとうなずく。あ、入場料はどうすれば……?

「良かったですね、レグルスさま。無駄にならなくて」
「今日までだからラッキーだったな」

 彼らがそう話しているのが聞こえた。

 どういう意味かしら? と二人に視線を向ける。レグルスさまは悪戯っぽく笑みを浮かべ、ひらひらと長方形の紙を見せる。

 ……これは、もしかして……チケット?

「入学したときに陛下からもらったんだ。観光にでもってさ」
「まぁ、そうでしたの……」
「よく見たらこのチケット、一枚で四人までって書いてあったんだよね。ブレント二人で見るのも虚しいし……」
「虚しい?」
「家族連れや恋人が多い場所で男同士って、かなり目立つと思わない?」

 なるほど、確かにそれは目立ちそうね。

 レグルスさまもブレンさまも、背が高くて格好良いし、女性に声をかけられそう。

 ……リンブルグには水族館、ないのかしら?

「きみたちがいてくれて良かったよ。さ、水族館を堪能しよう!」
「魚ー」

 ブレンさまが嬉しそうに笑っている。

 魚が好きなのかも……と、思ったら、続いた言葉に目を丸くした。

「今夜は魚料理がいいですねぇ」
「今から生きている魚を見るのに!?」

 クロエが思わずというようにツッコミを入れる。

 ……中々良いコンビになりそうな予感がするわ、クロエとブレンさま。
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