【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

水族館。

「それにしても、海も近くない王都で、よく水族館を建設しましたね」
「海が近くないからこそ、海の生物を民に見せたいという陛下のお心遣いです」
「その心は?」
「……我が国の魔法の技術は素晴らしいんだぞ、という見栄ですね」

 チケットを受付に見せて、手の甲にぽんとスタンプを押される。

 このスタンプは魔道具でできていて、一日フリーパスの証になり、閉館と同時に効力を失い消えるものだ――と、ブレンさまのパンフレットに書いてあった。

 入場するために並んで、ひそひそと言葉を交わす。

 王都は陸の中心にあるから、水族感を建設するのにはかなり時間がかかったそうだ。

 それでも、陛下が建設を押し切ったのは――魔法の技術を、見せたかったから。

 たまに、陛下は魔法の技術を見せつけるために、無茶なことを指示するときがある。

 海に住んでいる魚たちを活かしたまま移動できる技術があるということを、他国に見せるためのもの。

 パフォーマンスの一種だろう。

 そして、水の中で息ができない人間たちはこうも考える。

 ――もしも、その魔法を人に使ったら?

「パフォーマーだなぁ」
「……戦争になるよりはマシですけどね。リンブルグはどうでしょうか?」
「あー、今の王都ってどっちだ?」
「海側ですねー」

 ……ん?

 わたくしとクロエは首を(ひね)った。今の王都って、どういうこと?

 その言い方では、王都がころころ変わっているように聞こえるんだけど……
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