【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 だってあれだけキラキラした目で「いわし……煮て骨まで……」とか「サーモン……刺身……あ、漬けもいいなぁ」とか、「(さば)いてみたいなぁ、マグロ」なんて言うのだもの……!

 というか、小さめとはいえ、よくマグロをここまで運んだものだと感心してしまった。

 サメは見ていたけれど、サメについてはなにも言わなかった。ただぽつりと、

「……周りの魚、食べているのかなぁ……」

 そうつぶやいていた。羨ましそうに。

 ブレンさまの考えていることは、すべて食に関することなのでは? と考えていると、クロエはサメを見ながら「怖いのか可愛いのか、よくわからない顔をしていますね」とじっくり眺めていた。

「あ、イルカのショーがそろそろ始まるみたいだ。見にいくかい?」
「はい、行きましょう」

 イルカのショーの場所に向かうと、人気があるらしくびっしりと人がいた。最前列の人にはレインコートを渡している。

 わたくしたちは来るのが遅かったみたいで、遠くから見ることになった。

 それでも、飼育員のいうことを聞いて演技するイルカの姿は愛らしかった。きゅいきゅい鳴いて、水中からジャンプ!

 その水しぶきを、最前列の人たちが「キャー!」と楽しそうに受けていた。

「遠目ですけど、可愛いですね」
「そうですわね。……イルカってこんなにも賢いのね……」

 感心したようにつぶやけば、レグルスさまが「飼育員の努力の賜物(たまもの)だな」と返してくれた。確かに。

 イルカもすごいけれど、それを教え込んだ飼育員の努力もすごいわ。
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