【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 わたくしは花祭りに参加していなかったから、知らなかったわ……

 裏方で参加はしていたけれど、お母さまに『お前が表に出るのはもう少しあとよ』と言われていたから。

「それじゃあ、そこで魔法が封じられた……?」
「かもしれません。ですが、そんなこと可能なのでしょうか?」
「禁術の一つでしょうねぇ」

 謎は深まるばかり、ね。

 すべて憶測だもの。……だけど、一人で悶々としているよりはずっと良い。

 マーセルには、わたくしのように話せる人がいないと思うから、そこは素直に憐れだと思う。

「……彼女もまた、被害者なのかもしれないのね……」
「カミラさま……それは、同情ですか?」

 クロエに問われて、こくりとうなずいた。

 だって、わたくしがマーセルの立場だったなら、どうなっていたかわからない。

 本当の家族に、愛されて育ち……マティス殿下に憧れを抱いていたかもしれないもの。

 今、マーセルの味方はこの学園に一人もいないと考えると、やはり不憫(ふびん)だと思ってしまう。

「わたくしがこうやって穏やかに過ごせるのは、クロエたちがいるからよ。……でも、あの子にはそんな人たちがいないでしょう……?」

 マーセルの本当の家族であるベネット公爵たちが、『カミラ』とどんなふうに接しているのか……ずっとあの家で育っていたわたくしにはわかる。

「ブレンさま、明日……よろしくお願いいたします。マーセルの魂になにが起こっているのか、わたくしも知りたいと考えています」

 わたくしがこんなことを頼む資格なんて、ないのかもしれないけれど……

 そう、願わずにはいられなかった。
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