【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
 クロエがおずおずと手を上げて首をかしげる。みんな一斉に首を縦に動かすと、彼女は安堵したように息を吐く。

「それでは、私は両親に手紙を書きますね。次の休みに会いに行くって」
「マーセルのご両親は王都に住んでいるの?」
「はい。うちは領地を持っていませんから。男爵の領って、村くらいの大きさなんですって。だから、お父さまは村よりも安定して王都に暮らせるほうがいい、と王都で家を買ったんです」
「そうだったの……」

 マーセルの家ってどんな家なのかしら……?

「ああ、そうだ。ちょっと待っていて。貴女、今、テキストやノートは持っていて?」
「え? は、はい」

 貸してちょうだい、とマーセルからテキストとノートを受け取り、パラパラと捲る。マーセルなりに授業についていこうとしていることがわかる書き込みだった。

「今日の課題はわたくしが()くわ」
「え。あ、ありがとうございます」
「お母さまになにか言われたら、わからないところを聞いてきていた、と伝えて。そうすれば、あの部屋に閉じ込められることはないから」

 ノートに挟まれていた今日の課題を解いていく。すらすらと解いていくのを、四人が見ているから、なんだか気恥ずかしいわ。

「ところで、あの部屋って?」
「……聞いたらきっと、絶句しますわよ」

 今日の課題をノートに挟み、ぱたんと閉じる。テキストとノートをマーセルに渡して、眉を下げて微笑んだ。
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