【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
オリヴィエさまの声が震えていた。そして、情報過多になったのか、ふっと気を失ってしまったようだ。ノランさまとマーセルが「オリヴィエ!」や「お母さま!」と声を上げる。
「……オリヴィエさまには、申し訳ないことをしましたわね」
わたくしの口から、『お母さま』と呼ぶことはないでしょう。今までずっと、マーセルを実の娘だと信じて育ててきたオリヴィエさま。
「……どうして、知ったのですか?」
「マティス殿下に聞きましたの。……本来ならば、マーセルが公爵令嬢だということを」
嘘ではない。あのときのわたくしは『マーセル』だったけれど、ね。
「これで失礼しますわ。――さようなら、カースティン男爵」
「まっ……!」
引き止めようとするノランさまをじっと見つめる。彼は、諦めたように目を伏せた。
マーセルを残して、わたくしたちはその場をあとにし、ここまで来るまでに乗っていた馬車に乗り込み、今度はわたくしの――いえ、ベネット公爵邸に向かった。レグルスさまも、ブレンさまも、クロエも一緒に。
こうして『カミラ』として公爵邸に行くのは、とても久しぶりのような気がする。
客人を連れて帰ってきたわたくしに、公爵邸のメイドや執事たちは驚きを隠せないようだった。
「……オリヴィエさまには、申し訳ないことをしましたわね」
わたくしの口から、『お母さま』と呼ぶことはないでしょう。今までずっと、マーセルを実の娘だと信じて育ててきたオリヴィエさま。
「……どうして、知ったのですか?」
「マティス殿下に聞きましたの。……本来ならば、マーセルが公爵令嬢だということを」
嘘ではない。あのときのわたくしは『マーセル』だったけれど、ね。
「これで失礼しますわ。――さようなら、カースティン男爵」
「まっ……!」
引き止めようとするノランさまをじっと見つめる。彼は、諦めたように目を伏せた。
マーセルを残して、わたくしたちはその場をあとにし、ここまで来るまでに乗っていた馬車に乗り込み、今度はわたくしの――いえ、ベネット公爵邸に向かった。レグルスさまも、ブレンさまも、クロエも一緒に。
こうして『カミラ』として公爵邸に行くのは、とても久しぶりのような気がする。
客人を連れて帰ってきたわたくしに、公爵邸のメイドや執事たちは驚きを隠せないようだった。