【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「お父さまたちはどこへ?」
「あ、えっと、執務室にいらっしゃいます」
「わかったわ、ありがとう」

 お父さまたちがどこにいるのかを尋ね、返ってきた言葉にお礼を伝えてからずんずんと執務室に足を運ぶ。

 執務室の前に立ち、ノックもせずに扉を勢いよく開いた。

「ごきげんよう、お父さま。――お母さまとお兄さまも、こちらにいらっしゃったのですね」
「カミラ! なんてはしたない真似を!」

 お母さまが睨みつけてきた。わたくしは目元を細めてお母さまをじっと見つめる。その眼光の鋭さに、怯んだように息を呑むのを見て、ツカツカと足音を立ててお父さまに近付き、口を開く。

「わたくしとマティス殿下の婚約を白紙にし、わたくしをベネット家から解放してください」
「い、いきなりなにを言っているんだ、カミラ!」
「わたくし、もう全部知っておりますの。あなた方がわたくしの本当の家族ではないことも、本当は男爵家に生まれていたことも、陛下がどうしてわたくしをマティス殿下の婚約者であることを望んだのかも!」

 しん、と静まり返った執務室の中で、レグルスさまがわたくしに近付き、お父さまたちに視線を巡らせる。

「証人が必要なら、俺とブレン、それからクロエも証人になるぜ?」
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