【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
もう、我慢はしない。
レグルスさまがわたくしを庇ってくれた。そして、お母さまに冷たい言葉を浴びせている。彼の言葉に、お母さまは「離しなさいっ」と声を荒げた。
「どうしてそこまで、カミラ嬢を『完璧な公爵令嬢』にしようとしたんですか? カースティン男爵夫妻の子だから、にしては厳しすぎる気がするのですが?」
呆れたようなレグルスさまの声に、お母さまは忌々しそうに表情を歪め、お父さまが立ち上がりそっとお母さまの方に手を置く。
「……マティス殿下の婚約者として、完璧な公爵令嬢が必要だからだ」
「完璧な公爵令嬢、ねぇ……。カミラ嬢、きみは完璧になりたいかい?」
こちらを振り返り問いかけるレグルスさま。
わたくしはゆっくりと首を左右に振った。……無理よ、わたくしには。
「いいえ。わたくしは、完璧ではありませんもの」
マーセルの身体に入って、召使学科の人たちを見て気付いたの。
普通の令嬢や令息は、『完璧』とは程遠いところにいるのだと――……
「公爵家の令嬢として、お母さまたちに厳しく育てられ……わたくしは、わたくしの自我を押し殺して生きていました」
ベネット公爵家で過ごしていた年月を思い出しながら、一度言葉を切った。わたくしの前にいるレグルスさまの背中がとても大きく見える。
手を伸ばして、彼の服を軽く掴む。そのことに驚いたのか、レグルスさまが目を丸くしてわたくしに視線を向け、それからふっと表情を緩めて小さくうなずいた。
「どうしてそこまで、カミラ嬢を『完璧な公爵令嬢』にしようとしたんですか? カースティン男爵夫妻の子だから、にしては厳しすぎる気がするのですが?」
呆れたようなレグルスさまの声に、お母さまは忌々しそうに表情を歪め、お父さまが立ち上がりそっとお母さまの方に手を置く。
「……マティス殿下の婚約者として、完璧な公爵令嬢が必要だからだ」
「完璧な公爵令嬢、ねぇ……。カミラ嬢、きみは完璧になりたいかい?」
こちらを振り返り問いかけるレグルスさま。
わたくしはゆっくりと首を左右に振った。……無理よ、わたくしには。
「いいえ。わたくしは、完璧ではありませんもの」
マーセルの身体に入って、召使学科の人たちを見て気付いたの。
普通の令嬢や令息は、『完璧』とは程遠いところにいるのだと――……
「公爵家の令嬢として、お母さまたちに厳しく育てられ……わたくしは、わたくしの自我を押し殺して生きていました」
ベネット公爵家で過ごしていた年月を思い出しながら、一度言葉を切った。わたくしの前にいるレグルスさまの背中がとても大きく見える。
手を伸ばして、彼の服を軽く掴む。そのことに驚いたのか、レグルスさまが目を丸くしてわたくしに視線を向け、それからふっと表情を緩めて小さくうなずいた。