【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「――さようなら」
小さくつぶやいて、前を向く。
馬車に乗り込んで再びカースティン男爵邸へ。
数回、深呼吸を繰り返してから真っ直ぐにブレンさまを見つめた。
「ブレンさま、お聞きしたいことがございます」
「なんでしょうー?」
「わたくしたちの鎖は、どうして解かれたのですか?」
クロエの部屋では無理だった。あの一回で、コツを掴んだということかしら? 小首をかしげて尋ねると、ブレンさまはきょとんとした表情を浮かべてから、ぽんと手を叩く。
「動揺したからですよー」
「動揺?」
確かにマーセルもわたくしも、動揺したとは思うけれど……それだけで?
「雁字搦めの鎖が緩んだ瞬間を狙ったんです。これもありましたし」
すっと取り出したのはお札……のように見える一枚の紙。
「それは?」
クロエが興味津々にその紙を見つめてから、ブレンさまに視線を移して問いかける。
彼はにこっと笑って、ひらひらと紙を揺らした。
「これは、ちょっとしたブースターです」
「ブースター?」
「うわ、まだ持ってたのか、それ」
ぎょっとしたようなレグルスさまの声に、彼らを交互に見て首をかしげる。
「レグルスさまのおかげでもありますねー」
「レグルスさまの……?」
眉を下げてレグルスさまを見つめると、彼は後頭部に手を置いて「うーん」となにかを悩んでいるようだった。
わたくしたちには教えづらいことなのかもしれない、と口を開こうとすると、レグルスさまは言葉を紡ぐのが先だったので、口を閉じる。
「趣味でそういうの作っているんだ」
「……趣味、ですか?」
それはあまりにも意外な言葉で、目を丸くしてしまった。
小さくつぶやいて、前を向く。
馬車に乗り込んで再びカースティン男爵邸へ。
数回、深呼吸を繰り返してから真っ直ぐにブレンさまを見つめた。
「ブレンさま、お聞きしたいことがございます」
「なんでしょうー?」
「わたくしたちの鎖は、どうして解かれたのですか?」
クロエの部屋では無理だった。あの一回で、コツを掴んだということかしら? 小首をかしげて尋ねると、ブレンさまはきょとんとした表情を浮かべてから、ぽんと手を叩く。
「動揺したからですよー」
「動揺?」
確かにマーセルもわたくしも、動揺したとは思うけれど……それだけで?
「雁字搦めの鎖が緩んだ瞬間を狙ったんです。これもありましたし」
すっと取り出したのはお札……のように見える一枚の紙。
「それは?」
クロエが興味津々にその紙を見つめてから、ブレンさまに視線を移して問いかける。
彼はにこっと笑って、ひらひらと紙を揺らした。
「これは、ちょっとしたブースターです」
「ブースター?」
「うわ、まだ持ってたのか、それ」
ぎょっとしたようなレグルスさまの声に、彼らを交互に見て首をかしげる。
「レグルスさまのおかげでもありますねー」
「レグルスさまの……?」
眉を下げてレグルスさまを見つめると、彼は後頭部に手を置いて「うーん」となにかを悩んでいるようだった。
わたくしたちには教えづらいことなのかもしれない、と口を開こうとすると、レグルスさまは言葉を紡ぐのが先だったので、口を閉じる。
「趣味でそういうの作っているんだ」
「……趣味、ですか?」
それはあまりにも意外な言葉で、目を丸くしてしまった。