【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「……お願い?」
馬車の窓を開けて、マーセルに視線を向ける。彼女はとても真剣な表情を浮かべて、こくりとうなずき、自身を落ち着かせるように深呼吸を繰り返してわたくしを見つめる。
「私に――教えてほしいのです。どうすれば、マティス殿下の隣に立てるのかを」
その真摯なまなざしに、わたくしはふっと微笑みを浮かべた。
――マーセル、貴女、本当に……マティス殿下が好きなのね。
いつか思ったことを、また感じた。
「わたくしは彼と婚約を白紙にしたいから、協力するわ。でも、その前に……カースティン男爵と少しお話がしたいのだけど、……会えるかしら?」
「……大丈夫だと思います。案内しますね」
本来なら、わたくしがマーセルの立場なのよね。でも、身体に沁み込んだ『公爵家の令嬢』という立場はなかなか抜けなさそうだと考えた。どうしても、『ベネット公爵家の令嬢』として振る舞ってしまう。
「ありがとう。では、貴女との話は、カースティン男爵と話してからね」
「わかりました。こちらです、ついてきてください」
馬車から降りて、マーセルの案内でカースティン男爵のもとへ。
「オリヴィエさまは……」
「寝込みました。お母さまは、陛下のお考えも知らなかったみたいで……」
「……そう」
マーセルは迷いなく家の中を歩いていく。
馬車の窓を開けて、マーセルに視線を向ける。彼女はとても真剣な表情を浮かべて、こくりとうなずき、自身を落ち着かせるように深呼吸を繰り返してわたくしを見つめる。
「私に――教えてほしいのです。どうすれば、マティス殿下の隣に立てるのかを」
その真摯なまなざしに、わたくしはふっと微笑みを浮かべた。
――マーセル、貴女、本当に……マティス殿下が好きなのね。
いつか思ったことを、また感じた。
「わたくしは彼と婚約を白紙にしたいから、協力するわ。でも、その前に……カースティン男爵と少しお話がしたいのだけど、……会えるかしら?」
「……大丈夫だと思います。案内しますね」
本来なら、わたくしがマーセルの立場なのよね。でも、身体に沁み込んだ『公爵家の令嬢』という立場はなかなか抜けなさそうだと考えた。どうしても、『ベネット公爵家の令嬢』として振る舞ってしまう。
「ありがとう。では、貴女との話は、カースティン男爵と話してからね」
「わかりました。こちらです、ついてきてください」
馬車から降りて、マーセルの案内でカースティン男爵のもとへ。
「オリヴィエさまは……」
「寝込みました。お母さまは、陛下のお考えも知らなかったみたいで……」
「……そう」
マーセルは迷いなく家の中を歩いていく。