【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「手伝うよ」

 いつの間にかわたくしの隣にきていたレグルスさまが、そっと肩に手を置いた。じんわりと彼の体温と――魔力を感じる。

 こくりとうなずいて、騎士の方々に声をかけた。

「わたくしたちが陛下の魔力を抑えます! そのあいだに……!」
「協力、感謝する!」

 騎士の一人が言葉を返してくれた。レグルスさまと一緒に、グラエル陛下の魔力を抑え込むバリアを張り続ける。

 レグルスさまの魔力と、わたくしの魔力が溶け合い、とても強いバリアになったようだ。チッと舌打ちするグラエル陛下。バリアが破れなくて、イライラしているように見えた。

「その調子。……もう少しで、終わるよ」
「……え?」

 弾かれたようにレグルスさまを見上げると、彼はにこりと微笑みを浮かべて、パチンと指を鳴らした。すると――まるでリボンのようなもので、グラエル陛下が拘束された。一瞬の出来事に目を見開くと、動けなくなったグラエル陛下を騎士たちが抑え込み、「申し訳ありません」とつぶやいてから彼の意識を奪う。

「……終わった、の?」
「陛下にとっては多勢に無勢って感じだったなぁ」

 グラエル陛下の魔力が消え、騎士がひょいとグラエル陛下を持ち上げると、パンパン、と手を叩く耳に届いた。

 音のほうへ振り返ると、エセル王妃が厳しい表情から笑顔を浮かべ、パーティー会場にいる全員に聞こえるように凛とした声で告げる。

「楽しいパーティーを壊して、申し訳ありません。ですが――この学園の学生たちの勇姿(ゆうし)、この目でしっかりと見届けました。あなた方が学園を卒業し、世に羽ばたく日を楽しみにしていますわ」

 エセル王妃の言葉に、先生たちがパチパチと拍手を送った。わたくしはレグルスさまと顔を見合わせて、それから先生たちと同じように拍手を送る。気付けば、パーティー会場にいる人たちは拍手をしていた。

「――カースティン男爵、ベネット公爵。あとでわたくしの宮にきなさい。あなた方の事情は、わたくしがしっかりと聞き()げましょう」
「……かしこまりました」

 ……これで、ようやく……終わった、のね……?

 安心したら、なんだか、身体が……重いわ……

「カミラ嬢!」

 薄れていく意識の中、レグルスさまの心配そうな顔が印象に残った。
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