【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
ダンスレッスン。
わたくしが最後かしら? ホールに集まっている人たちを眺めていると、ぽんと肩に手を置かれた。振り返るとマティス殿下がいた。……まぁ、いるわよね、騎士学科だものね。
「身体の調子はどうだい、マーセル」
「そこそこですわ、マティス殿下」
あまり声をかけてほしくない。ほら、こっちを見ている人たちの多いこと多いこと! 不躾なまなざしを受けて居心地が悪い。……でも、こちらを見る人たちの気持ちもわかる。
わたくしだって、関係なければ見ていると思うわ。
とはいえ、先生がすぐに来たから、みんなの視線は先生に集中した。刺すような視線を感じるけれど、今は気にしない。
「それでは、本日のダンスレッスンは……」
先生がワルツに話して、騎士学科の人とワルツの練習をすることに。マティス殿下がわたくしに手を差し伸ばした。……ここで拒否するのはだめよね。足、踏んじゃおうかしら。
ああ、でもそうしたら彼のことだもの、「気にしなくて良いよ、マーセル。ステップの確認をしよう」なんてマーセルと踊り続けそうね。
「マーセル」
「はい、マティス殿下」
愛しそうに、マーセルの名を呼ぶマティス殿下。
わたくしの心はびっくりするほど動かなかった。
親同士で決めた、婚約者。ずっと彼に気に入られるようにならなきゃって思っていた。それも、間違いだったのかもしれないわね……。割り切った関係にしようとも思ったけれど、わたくしは愛したいし、愛されたい。
……それが叶わないことだと、知ってしまった。
「身体の調子はどうだい、マーセル」
「そこそこですわ、マティス殿下」
あまり声をかけてほしくない。ほら、こっちを見ている人たちの多いこと多いこと! 不躾なまなざしを受けて居心地が悪い。……でも、こちらを見る人たちの気持ちもわかる。
わたくしだって、関係なければ見ていると思うわ。
とはいえ、先生がすぐに来たから、みんなの視線は先生に集中した。刺すような視線を感じるけれど、今は気にしない。
「それでは、本日のダンスレッスンは……」
先生がワルツに話して、騎士学科の人とワルツの練習をすることに。マティス殿下がわたくしに手を差し伸ばした。……ここで拒否するのはだめよね。足、踏んじゃおうかしら。
ああ、でもそうしたら彼のことだもの、「気にしなくて良いよ、マーセル。ステップの確認をしよう」なんてマーセルと踊り続けそうね。
「マーセル」
「はい、マティス殿下」
愛しそうに、マーセルの名を呼ぶマティス殿下。
わたくしの心はびっくりするほど動かなかった。
親同士で決めた、婚約者。ずっと彼に気に入られるようにならなきゃって思っていた。それも、間違いだったのかもしれないわね……。割り切った関係にしようとも思ったけれど、わたくしは愛したいし、愛されたい。
……それが叶わないことだと、知ってしまった。