【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
……そうよね。この身体はマーセルのものだから……二人きりでデートするには、リスクが高すぎる。
ドキドキと早鐘を打つ鼓動を落ち着かせようと、何度か深呼吸を繰り返す。少し落ち着いてから、わたくしたちはカフェをあとにした。
「暗くなってきましたね。時間が過ぎるのはあっという間です」
ブレンさまが空を見上げながら言葉を紡ぎ、わたくしたちも空を見上げた。オレンジ色に染まる王都を眺めて、今日が終わることを残念に思い、そっと胸元に手を置く。
――……楽しかったのね、わたくし。
今日、外の世界をこの目で見られて。
平民たちが一生懸命に働いている姿や、遊んでいる姿を見た。
みんな、楽しそうで……キラキラしていて……これが一部のことだって、ちゃんとわかっている。
わかってはいるけれど……実際に見てみて、国民たちはみんな生きているのだと改めて実感した。
わたくしは本当に、勉強をして知っているだけで、実際の国民のことは知らなかったから。
そして――この国がリンブルグの留学生たちを冷遇していたことを知って、情けなくもなった。
交換留学でリンブルグに向かったのは第三王子だ。彼はまだ幼いから、同じくらいの年齢のマティス殿下が向かうべきだったのではないか、と今でも思っている。
でも、彼は頑なに留学を嫌がった。
もしかしたら、彼の提案なのかもしれない。そうだとしたら――……
「あ、馬車来ましたよ。行きましょう、寮へ」
「え?」
ホテルを予約していると言っていたと思うのだけど……? と目を瞬かせていると、馬車に乗せられた。そしてそのまま寮に戻る。
ぎゅっとノートを抱きしめて、キラキラとしている世界を馬車の窓からじっと見つめた。
ドキドキと早鐘を打つ鼓動を落ち着かせようと、何度か深呼吸を繰り返す。少し落ち着いてから、わたくしたちはカフェをあとにした。
「暗くなってきましたね。時間が過ぎるのはあっという間です」
ブレンさまが空を見上げながら言葉を紡ぎ、わたくしたちも空を見上げた。オレンジ色に染まる王都を眺めて、今日が終わることを残念に思い、そっと胸元に手を置く。
――……楽しかったのね、わたくし。
今日、外の世界をこの目で見られて。
平民たちが一生懸命に働いている姿や、遊んでいる姿を見た。
みんな、楽しそうで……キラキラしていて……これが一部のことだって、ちゃんとわかっている。
わかってはいるけれど……実際に見てみて、国民たちはみんな生きているのだと改めて実感した。
わたくしは本当に、勉強をして知っているだけで、実際の国民のことは知らなかったから。
そして――この国がリンブルグの留学生たちを冷遇していたことを知って、情けなくもなった。
交換留学でリンブルグに向かったのは第三王子だ。彼はまだ幼いから、同じくらいの年齢のマティス殿下が向かうべきだったのではないか、と今でも思っている。
でも、彼は頑なに留学を嫌がった。
もしかしたら、彼の提案なのかもしれない。そうだとしたら――……
「あ、馬車来ましたよ。行きましょう、寮へ」
「え?」
ホテルを予約していると言っていたと思うのだけど……? と目を瞬かせていると、馬車に乗せられた。そしてそのまま寮に戻る。
ぎゅっとノートを抱きしめて、キラキラとしている世界を馬車の窓からじっと見つめた。