【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜
「……それは、あまり良くない思い出?」
「良くない……うーん、わたくしが覚えているのは……」

 どんなふうに説明すれば良いのかしら。

 とりあえず、わたくしが子どもの頃にそのホテルで、マティス殿下と両親たちと食事をしたことを話した。

 すると、彼らは神妙な表情になってしまい、眉を下げて微笑む。

 やっぱり話すべきではなかったかしら……と考え込んでしまった。

「それじゃあ、今度は楽しい思い出にしよう。昔は楽しくなかったんだろ? 顔を見ればわかるよ」

 思わず、頬に触れてしまう。クロエがふふっと笑い出すのを見て、ブレンさまは慈しむようなまなざしでこちらを見る。

「……そうですわね」

 三人に見つめられて、こくりとうなずいた。

 そうね、楽しくなかった思い出を、楽しい思い出に変えてしまえばいいのよね。

 ホテルにつき、中に入るとすぐに個室に案内された。

 わたくしたちが一緒にいるのを見られないように? または、気兼ねなく会話できるように?

 そういう心配りも、とても嬉しく感じる。

 コース料理をすでに予約していたようで、スムーズに料理が運ばれてきた。

「どの料理も美味しいですね」
「さすが王室御用達……?」
「うーん、僕には量が物足りないです……」

 しょんぼりと肩を下げるブレンさまに、わたくしたちはくすくすと笑う。

 確かにたくさん召し上がるブレンさまには、物足りないかもしれない量だったのかもしれない。

 ……でも、パンケーキを食べたあとにガトーショコラやパフェも食べたのに、まだ入ることに驚きを隠せないわ……
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