〜Midnight Eden〜 episode3.【夏霞】
現在追っている事件でもインスタグラムが重要な証拠だ。毎日毎日、警視庁のパソコンから被害者のインスタのページにアクセスして、目を皿にして手掛かりを探す。
雪枝の前ではおくびにも出さないが、これだけ捜査でインスタグラムに触れていると、さすがにその存在自体に辟易《へきえき》してくる。
『インスタって皆やってるもんなんだな』
「私も最近始めたんです。インスタやっていないとクラスの子達の話題についていけないから」
学校の話をする雪枝は時折、寂しげな表情を見せる。電話で話していても話題が学校の話に及ぶと彼女の声は覇気を失った。
SNSをしていないと同級生の輪に入れない……、流行りに乗らないと仲間に加われない疎外感は九条にも過去に覚えがある。
いつの時代も何歳であっても、人付き合いは大変だ。
向かい合う雪枝の顔が写らないように、手前のケーキにピントを合わせた九条の指がスマホのシャッターボタンを押した。
撮影できた写真はレアチーズケーキとミルクティー、着席する雪枝の上半身のみが写り込んでいる。写真の構図や出来がこれでいいのかわからないが、雪枝は満足そうだった。
『俺はそういうコミュニケーションツールってやつが向いてなくてさ。学生時代も一応、当時の流行りだったブログの登録はしても何か投稿するでもなく放置で、ひたすらサッカーの練習してたな』
「そう言えば九条さんが教えてくれたサッカー選手の彦坂京介さんのインスタを見つけましたよ」
『京介さんもインスタやってるの?』
彦坂京介《ひこさか きょうすけ》はイタリア、セリエAの強豪チームに所属するプロサッカー選手。ワールドカップの日本代表にも選ばれている日本が誇る一流の選手だ。
雪枝のインスタグラムページが彦坂京介のアカウントを表示する。彼女のスマホを借りて京介のインスタを閲覧する九条の瞳は輝いていた。
『おお、すげぇ。本当にあの京介さんだ』
「彦坂選手はファンと英語やイタリア語で会話されているので、コメント欄を見ているだけで勉強になって楽しいです」
『確かにコメントは日本語よりアルファベットが多いね。これは日本語のコメントだ。……このコメントもしかして隼人《はやと》さんっ?』
アルファベットが並ぶコメント欄に混ざった見慣れた日本語の文章。
京介にコメントをしたアカウントのユーザー名だけでは個人の特定がつかなかったが、そのコメントへの京介の返信には紛れもなく“隼人”と記載されていた。
「隼人さんって、前に教えてくれた彦坂選手とプレイしていた九条さんの憧れの……」
『そうそう、俺が小学生の時に所属していたサッカークラブの高校生チームに京介さんと隼人さんがいたんだ。隼人さんはプロにはならなかったけど、京介さんも隼人さんも俺世代のサッカー小僧には憧れのプレイヤーだった』
かつて九条が所属していた関東のサッカークラブには二人の伝説的な選手がいた。ひとりはそのクラブから世界に羽ばたいた彦坂京介。
もうひとりは京介と肩を並べる技術と才能を宿し、京介のライバルでもあった木村隼人。
雪枝の前ではおくびにも出さないが、これだけ捜査でインスタグラムに触れていると、さすがにその存在自体に辟易《へきえき》してくる。
『インスタって皆やってるもんなんだな』
「私も最近始めたんです。インスタやっていないとクラスの子達の話題についていけないから」
学校の話をする雪枝は時折、寂しげな表情を見せる。電話で話していても話題が学校の話に及ぶと彼女の声は覇気を失った。
SNSをしていないと同級生の輪に入れない……、流行りに乗らないと仲間に加われない疎外感は九条にも過去に覚えがある。
いつの時代も何歳であっても、人付き合いは大変だ。
向かい合う雪枝の顔が写らないように、手前のケーキにピントを合わせた九条の指がスマホのシャッターボタンを押した。
撮影できた写真はレアチーズケーキとミルクティー、着席する雪枝の上半身のみが写り込んでいる。写真の構図や出来がこれでいいのかわからないが、雪枝は満足そうだった。
『俺はそういうコミュニケーションツールってやつが向いてなくてさ。学生時代も一応、当時の流行りだったブログの登録はしても何か投稿するでもなく放置で、ひたすらサッカーの練習してたな』
「そう言えば九条さんが教えてくれたサッカー選手の彦坂京介さんのインスタを見つけましたよ」
『京介さんもインスタやってるの?』
彦坂京介《ひこさか きょうすけ》はイタリア、セリエAの強豪チームに所属するプロサッカー選手。ワールドカップの日本代表にも選ばれている日本が誇る一流の選手だ。
雪枝のインスタグラムページが彦坂京介のアカウントを表示する。彼女のスマホを借りて京介のインスタを閲覧する九条の瞳は輝いていた。
『おお、すげぇ。本当にあの京介さんだ』
「彦坂選手はファンと英語やイタリア語で会話されているので、コメント欄を見ているだけで勉強になって楽しいです」
『確かにコメントは日本語よりアルファベットが多いね。これは日本語のコメントだ。……このコメントもしかして隼人《はやと》さんっ?』
アルファベットが並ぶコメント欄に混ざった見慣れた日本語の文章。
京介にコメントをしたアカウントのユーザー名だけでは個人の特定がつかなかったが、そのコメントへの京介の返信には紛れもなく“隼人”と記載されていた。
「隼人さんって、前に教えてくれた彦坂選手とプレイしていた九条さんの憧れの……」
『そうそう、俺が小学生の時に所属していたサッカークラブの高校生チームに京介さんと隼人さんがいたんだ。隼人さんはプロにはならなかったけど、京介さんも隼人さんも俺世代のサッカー小僧には憧れのプレイヤーだった』
かつて九条が所属していた関東のサッカークラブには二人の伝説的な選手がいた。ひとりはそのクラブから世界に羽ばたいた彦坂京介。
もうひとりは京介と肩を並べる技術と才能を宿し、京介のライバルでもあった木村隼人。