〜Midnight Eden〜 episode3.【夏霞】
『ビシソワーズは愁さんにも手伝ってもらいました。愁さんが料理できるって知りませんでした?』
「ええ……。私には一度も手料理作ってくれたことないよね?」
『今度、弁当作ってやるよ』
愁が料理ができるとは一言も聞いていない。話を合わせるのはこちらなのだから、そういう情報は事前に言って欲しいと横目で彼を睨んでも、愁は涼しげな顔で美夜をあしらう。
まったく、とことん勝手な男だ。
『神田さんはワインはいける口ですか?』
「少しだけなら……いただきます」
三つの白ワインのグラスと、舞のグレープフルーツジュースのグラスが乾杯の音を鳴らして始まった奇妙な食事会。
白身魚のホイル焼きには見慣れない植物が添えられていた。
「これはハーブ?」
『うちで育てたローズマリーを一緒に包んでいます』
「お兄ちゃんはお花育てるのが趣味なの。テラスはお花畑になってて、あそこには観葉植物をいっぱい吊るしてるんだ。変わってるでしょ?」
舞の視線が窓際を差している。広々としたリビングの大きな窓には、名前のわからない様々な観葉植物の鉢がカーテンレールに沿ってロープで吊るされていた。
『植物に触れていると落ち着くんです。舞も愁さんも花には興味がないから、テラスは俺専用のスペースになっていますね』
「じゃあ大学では植物の勉強を?」
『いいえ、大学は法栄大学の政治経済学部です。舞は紅椿学院に』
「……紅椿学院?」
『どうかした?』
紅椿学院の名に反応を見せた美夜を、愁だけでなく伶や舞も訝《いぶか》しむ。美夜はかぶりを振って、手元のカトラリーを動かした。
「……ううん。なんでもないの」
デリヘル嬢連続殺人の捜査の最中に九条が遭遇した万引き未遂。それがきっかけで、九条が何かと世話を焼いている高校生も紅椿学院の生徒だ。
九条が雪枝という名で呼んでいたあの少女も高校一年生、舞と同学年になる。
「ええ……。私には一度も手料理作ってくれたことないよね?」
『今度、弁当作ってやるよ』
愁が料理ができるとは一言も聞いていない。話を合わせるのはこちらなのだから、そういう情報は事前に言って欲しいと横目で彼を睨んでも、愁は涼しげな顔で美夜をあしらう。
まったく、とことん勝手な男だ。
『神田さんはワインはいける口ですか?』
「少しだけなら……いただきます」
三つの白ワインのグラスと、舞のグレープフルーツジュースのグラスが乾杯の音を鳴らして始まった奇妙な食事会。
白身魚のホイル焼きには見慣れない植物が添えられていた。
「これはハーブ?」
『うちで育てたローズマリーを一緒に包んでいます』
「お兄ちゃんはお花育てるのが趣味なの。テラスはお花畑になってて、あそこには観葉植物をいっぱい吊るしてるんだ。変わってるでしょ?」
舞の視線が窓際を差している。広々としたリビングの大きな窓には、名前のわからない様々な観葉植物の鉢がカーテンレールに沿ってロープで吊るされていた。
『植物に触れていると落ち着くんです。舞も愁さんも花には興味がないから、テラスは俺専用のスペースになっていますね』
「じゃあ大学では植物の勉強を?」
『いいえ、大学は法栄大学の政治経済学部です。舞は紅椿学院に』
「……紅椿学院?」
『どうかした?』
紅椿学院の名に反応を見せた美夜を、愁だけでなく伶や舞も訝《いぶか》しむ。美夜はかぶりを振って、手元のカトラリーを動かした。
「……ううん。なんでもないの」
デリヘル嬢連続殺人の捜査の最中に九条が遭遇した万引き未遂。それがきっかけで、九条が何かと世話を焼いている高校生も紅椿学院の生徒だ。
九条が雪枝という名で呼んでいたあの少女も高校一年生、舞と同学年になる。