〜Midnight Eden〜 episode3.【夏霞】
少し話題が途切れた頃、黙々と食事を続けていた舞が話を切り出した。
「愁さんと美夜さんはどこで出会ったの?」
「赤坂の氷川公園の近くにイタリアンのお店があるの、わかるかな?」
『もしかしてムゲットですか?』
相づちを打つのは伶だ。いつか聞かれると思っていた質問の答えは用意できている。
「そこで相席になったのが最初の出会いだったね。それから何度かバーでお酒を飲んだりして……」
淀みなく答えられるのは、これが正真正銘の真実だから。むしろ真実はこの一点のみ。
『なるほど。だから愁さん、最近は夕飯をムゲットで済ませる頻度が高くなっていたんですね。神田さんと逢い引きするために』
『人聞きの悪い言い方だな。あそこは美夜との集合場所なんだよ』
この男は、人の気も知らずに呑気にワインを呷っていた。ほろ酔い気味の愁の顔色に変化はなくても、時折合わせる視線に込められた熱の意味が美夜を戸惑わせる。
「愁さんのどこが好きなの?」
それまで大人しくしていた舞から繰り出される攻撃に美夜はたじろぐ。好きな男の恋敵を睨み付ける少女の相手よりも、殺人犯の取り調べの方がはるかに気が楽だった。
「普段は愛想がないのに笑うとけっこう可愛い顔をするところや、さりげなく気遣ってくれるところかな。愁……の優しさに惹かれたの」
これは嘘? それとも真実? 口から自然と零れた美夜の言の葉に、穏やかに微笑む愁がいる。
二人を交互に見据えた舞は、震える声で最後の一球を投げ掛けた。
「愁さんは美夜さんのどこが好き?」
『お前はほんと直球で来るよな。……気が強くて皮肉屋のくせに恥ずかしがり屋で、照れた顔が可愛いとこ』
テーブルの下で触れ合う二人の指先。美夜の膝の上で、骨張った大きな手が華奢な小さな手を包み込んだ。
『極め手は美夜じゃないとダメだと思えたことだ。美夜とは結婚も考えてる。だから舞の気持ちには応えられない。ごめんな』
どこからが嘘で、どこからが本気?
真意が読めない男が放った言の葉は、彼以外の全員を困惑と驚愕の沼に突き落とす。
静まり返る室内に響いた場違いな音は、夏の風物詩。インディゴブルーの夜空に花火が咲き始めていた。
「愁さんと美夜さんはどこで出会ったの?」
「赤坂の氷川公園の近くにイタリアンのお店があるの、わかるかな?」
『もしかしてムゲットですか?』
相づちを打つのは伶だ。いつか聞かれると思っていた質問の答えは用意できている。
「そこで相席になったのが最初の出会いだったね。それから何度かバーでお酒を飲んだりして……」
淀みなく答えられるのは、これが正真正銘の真実だから。むしろ真実はこの一点のみ。
『なるほど。だから愁さん、最近は夕飯をムゲットで済ませる頻度が高くなっていたんですね。神田さんと逢い引きするために』
『人聞きの悪い言い方だな。あそこは美夜との集合場所なんだよ』
この男は、人の気も知らずに呑気にワインを呷っていた。ほろ酔い気味の愁の顔色に変化はなくても、時折合わせる視線に込められた熱の意味が美夜を戸惑わせる。
「愁さんのどこが好きなの?」
それまで大人しくしていた舞から繰り出される攻撃に美夜はたじろぐ。好きな男の恋敵を睨み付ける少女の相手よりも、殺人犯の取り調べの方がはるかに気が楽だった。
「普段は愛想がないのに笑うとけっこう可愛い顔をするところや、さりげなく気遣ってくれるところかな。愁……の優しさに惹かれたの」
これは嘘? それとも真実? 口から自然と零れた美夜の言の葉に、穏やかに微笑む愁がいる。
二人を交互に見据えた舞は、震える声で最後の一球を投げ掛けた。
「愁さんは美夜さんのどこが好き?」
『お前はほんと直球で来るよな。……気が強くて皮肉屋のくせに恥ずかしがり屋で、照れた顔が可愛いとこ』
テーブルの下で触れ合う二人の指先。美夜の膝の上で、骨張った大きな手が華奢な小さな手を包み込んだ。
『極め手は美夜じゃないとダメだと思えたことだ。美夜とは結婚も考えてる。だから舞の気持ちには応えられない。ごめんな』
どこからが嘘で、どこからが本気?
真意が読めない男が放った言の葉は、彼以外の全員を困惑と驚愕の沼に突き落とす。
静まり返る室内に響いた場違いな音は、夏の風物詩。インディゴブルーの夜空に花火が咲き始めていた。