〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
伶のこれまでの彼女達の中には舞との近すぎる距離感に嫉妬した女もいたが、伶と舞の間には純粋な兄と妹の愛情しかない。
「お兄ちゃんのファーストキスも舞?」
『それはどうかな』
「違うの? 小学生でもう彼女いたのぉ? ……お兄ちゃんならいそう……」
舞は相変わらず伶の膝に乗ってぶつぶつと独り言を呟いている。兄のファーストキスの相手に真剣に考えを巡らせる舞が可愛くて堪らない。
「もしかしてファーストキスの相手は京香ママ?」
『……あの人は母親じゃないか』
「だけど京香ママはお兄ちゃんのこと好きだったよ」
上目遣いに伶を見つめる舞を伶も見つめ返す。また怖い顔になってると指摘されるかと思えば、今度は舞も何も言わなかった。
『……なんでそう思う?』
「なんでだろ? 舞は小さかったからよくわかんないけど、京香ママなりにお兄ちゃんのこと可愛がってたよね。それに舞がお兄ちゃんにキスしたくなったのは、たぶん京香ママがパパとキスしてるのを見てたんだと思うの。京香ママとパパって子どもの前でもラブラブしてたでしょ?」
京香と父は、確かに伶や舞の前でも平然とキスをしていた。子どもの前でも性欲を剥き出しにする京香と父は存在自体が気持ち悪い。
伶が精通を経験したのも、夜の浅い時間に行われた京香と父の情事の声だ。小学生の伶がこれまで耳にしたことのない女の甲高い声が、伶の身体を少年から男に変えた。
「お兄ちゃん?」
『ああ……ごめん』
「お風呂入ってくるね。ナゲットとポテトご馳走さまでした」
膝から舞の重みが消える。大量の買い物袋を舞ひとりで運ばせるのは可哀想で、舞が風呂の支度をしている間に伶が半分以上を舞の部屋に運び込んでやった。
──“京香ママはお兄ちゃんのこと好きだったよ”──
舞の言葉が頭から離れない。否定したくても否定できなかったのは、あの女に植え付けられたトラウマのせい。
──“ねぇ伶。10年後も私を抱いてね? ハタチのあんたはすごくいい身体になってるだろうから……ああ、楽しみ。これからも私以外の女を抱いちゃダメよ……”──
自分以外の女は抱くなと京香にかけられた呪いに逆らって、伶は多くの女を抱いた。
どんな女を抱いても抱いても、目の前の女が京香に見えて、女が喘げばそれは京香の喘ぎ声に聴こえる。
今もたびたび京香の夢を見ては夜中にうなされて跳ね起きる。冷や汗が滲む最悪の悪夢は、二十歳の伶が京香を抱く夢だった。
この夢が京香が望んでいた理想の10年後だと思うとぞっとする。
愁に殺されても京香はしぶとく生き続けていた。
伶の悪夢の中で。
「お兄ちゃんのファーストキスも舞?」
『それはどうかな』
「違うの? 小学生でもう彼女いたのぉ? ……お兄ちゃんならいそう……」
舞は相変わらず伶の膝に乗ってぶつぶつと独り言を呟いている。兄のファーストキスの相手に真剣に考えを巡らせる舞が可愛くて堪らない。
「もしかしてファーストキスの相手は京香ママ?」
『……あの人は母親じゃないか』
「だけど京香ママはお兄ちゃんのこと好きだったよ」
上目遣いに伶を見つめる舞を伶も見つめ返す。また怖い顔になってると指摘されるかと思えば、今度は舞も何も言わなかった。
『……なんでそう思う?』
「なんでだろ? 舞は小さかったからよくわかんないけど、京香ママなりにお兄ちゃんのこと可愛がってたよね。それに舞がお兄ちゃんにキスしたくなったのは、たぶん京香ママがパパとキスしてるのを見てたんだと思うの。京香ママとパパって子どもの前でもラブラブしてたでしょ?」
京香と父は、確かに伶や舞の前でも平然とキスをしていた。子どもの前でも性欲を剥き出しにする京香と父は存在自体が気持ち悪い。
伶が精通を経験したのも、夜の浅い時間に行われた京香と父の情事の声だ。小学生の伶がこれまで耳にしたことのない女の甲高い声が、伶の身体を少年から男に変えた。
「お兄ちゃん?」
『ああ……ごめん』
「お風呂入ってくるね。ナゲットとポテトご馳走さまでした」
膝から舞の重みが消える。大量の買い物袋を舞ひとりで運ばせるのは可哀想で、舞が風呂の支度をしている間に伶が半分以上を舞の部屋に運び込んでやった。
──“京香ママはお兄ちゃんのこと好きだったよ”──
舞の言葉が頭から離れない。否定したくても否定できなかったのは、あの女に植え付けられたトラウマのせい。
──“ねぇ伶。10年後も私を抱いてね? ハタチのあんたはすごくいい身体になってるだろうから……ああ、楽しみ。これからも私以外の女を抱いちゃダメよ……”──
自分以外の女は抱くなと京香にかけられた呪いに逆らって、伶は多くの女を抱いた。
どんな女を抱いても抱いても、目の前の女が京香に見えて、女が喘げばそれは京香の喘ぎ声に聴こえる。
今もたびたび京香の夢を見ては夜中にうなされて跳ね起きる。冷や汗が滲む最悪の悪夢は、二十歳の伶が京香を抱く夢だった。
この夢が京香が望んでいた理想の10年後だと思うとぞっとする。
愁に殺されても京香はしぶとく生き続けていた。
伶の悪夢の中で。