〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
10月18日(Thu)

 小柴優奈の死体は港区六本木七丁目の公園の公衆トイレ内で見つかった。

死因は高濃度の覚醒剤注入による急性薬物中毒。優奈の身体には真新しい注射痕が見つかったが、使用した注射器はトイレや公園のどこからも発見できなかった。

 優奈は違法薬物使用の常習だった。彼女が西麻布のクラブに頻繁に出入りしていた証言があり、その店は警視庁の組織犯罪対策第五課が目をつけていた薬物取引の温床の場。
優奈の自宅からも数種類の違法薬物が見つかっている。

 公園に優奈を呼び出したのはケイと呼ばれる人物だ。
優奈のトークアプリの履歴を遡ると、彼女とケイは8月下旬頃から親密な関係を匂わせるメッセージのやりとりを重ねていた。

しかし優奈の履歴に残る〈ケイ〉が送ったメッセージは、現在はすべてUnknownと表示されている。これはトーク相手が、トークアプリのアカウント自体を削除して名無しになっている状態を意味する。

 従って彼の本名が本当にケイだったのかは不明。優奈がメッセージ上でケイと呼んでいた事実だけが画面上に存在していた。

 彼女は10月15日月曜日の夜、六本木のテレビ局で生放送の音楽番組を終えた後、ケイと待ち合わせた公園に向かった。

ケイは最初からこの夜に優奈を殺すつもりだったと推測できる。優奈を公衆トイレまで誘い、性的な行為を行うフリをして彼女に高濃度の覚醒剤を注射した。
殺害に使用した注射器はケイが持ち帰ったのだろう。もしかするとトイレに流したかもしれない。

 優奈は望月莉愛の集団強姦、リベンジポルノ事件の黒幕だ。
瀬田と増山の殺害の動機が莉愛の復讐ならば、優奈も殺しのリストに入っていてもおかしくはないが、優奈殺しは一連の連続絞殺事件とは様相が異なる。

殺害がタイミング的に瀬田と増山の殺害と重なったのか、ケイとの痴情の縺れか薬物絡みか。
捜査一課と組対五課は慎重に捜査を進めている。

 さらに今日発売の写真週刊誌、週刊ルポルタージュのスクープが世間をざわつかせていた。間もなく午前10時になるが、今朝のワイドショーとSNSはその話題一辺倒だ。

胸元を強調したグラビアアイドルが鎮座する週刊誌お決まりの表紙には、人目を誘因する赤文字で〈フルリールメンバー、及川果林と坂元凛々子、水面下で計画されていた電撃移籍の裏に枕営業の実態!〉と大きな見出しが書かれている。

 記事によればフルリールのメンバーの及川果林と坂元凛々子は、大手芸能プロダクションの幹部数人に対して性的な接待を行い、水面下で大手芸能事務所への移籍の話を進めていた。

紙面には、プロダクション幹部の男二人と腕を組んでラブホテルの建物を出入りする果林と凛々子の写真が掲載されている。
果林に至っては、幹部男性とホテル近くの路地裏で交わす抱擁とキスの写真もあった。
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