〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
 薬物に溺れたアイドルの殺人事件に追い討ちをかけるように、ネットでは枕営業をした果林と凛々子が血祭りに上げられていた。
フルリールは事実上の解散と言われている。

 フルリールの最後のメンバー、高倉咲希の動向に世間の注目が集まる中、美夜はケイの手掛かりを求めて六本木七丁目を歩き回った。ケイがどのような容姿で、そもそも本当に男かもわからない。

優奈がそう呼んでいただけの、架空の人物を探して街を彷徨《さまよ》う今は五里霧中の雲を掴む気分だ。

 歩き疲れた足をさすって彼女は車を停めたパーキングに戻る。そこで合流した九条は浮かない顔をしていた。

「どうかした?」
『今、雪枝ちゃんからメッセージが来てさ。学校サボったって。親には学校行くフリして家を出たんだけど、学校には行かずに今は高輪《たかなわ》の公園にいるらしい』

 大橋雪枝は今年の春、九条が捜査中に万引きの瞬間を目撃し、未遂で食い止めたことがきっかけで知り合った高校生。名門女子校と名高い紅椿学院高校の一年生だ。

「気になるなら様子見に行く?」
『いいのか?』
「高輪ならここから近い。こんな時間に高校生がふらふらしていたら補導されるよ」

 九条から伝え聞く雪枝の内面は健全な精神の持ち主とは言い難い。思春期特有の鬱憤や世間への反発があったとしても、大多数の十代はそれでも万引きや犯罪を犯さずに大人になれる。

人と獣の境界線を越えない十代と、越えてしまう十代がいる。雪枝にはあと一歩の境界線を越えてしまう危うさがあると、美夜は常々感じていた。

『雪枝ちゃん、学校での人付き合いに悩んでる様子だった。今のところは不登校にはなってないようだけど、ずる休みは危ない傾向だよな』
「下手をすれば、これがきっかけで学校に行けなくなるかもね。対応は間違えないように」
『おう。任せろ』

 雪枝の心の拠り所が九条になってしまっているこの状況を彼はどこまで理解している?
高輪まで車を走らせる隣の相棒は、果たしてどこまでわかっているのだろうか。
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