〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
動き始めた車内で美夜のスマホに主任の小山真紀から連絡が入った。捜査中に学校をサボった女子高校生を補導し、学校に送り届ける道中であると真紀に伝える。
少女が九条の知人だと言うことは事態が厄介になるため伏せた。
雪枝を港区芝の紅椿学院高校まで送り届けた帰り道、九条が冴えない表情で溜息をついた。
『あれで良かったんだよな?』
「大人としても警察官としても、学校に行かせた九条くんの対応は適切だった。だけど九条くんって鈍感? 本当に気付いてない?」
『何を?』
「あの子、車にいる私を見た途端に機嫌が悪くなったのよ」
『つまり……?』
ここまで言ってもわからないこの男は心底鈍感だ。
走行中もミラーを通して後部座席の様子は把握していた。雪枝の視線は運転席の九条に注がれていた。あれは恋をする女の眼差しだ。
「雪枝ちゃんは九条くんが好きなの。私でも気付いたのよ?」
九条の様子にそこまで驚きの気配はない。どこかで察していた雪枝の好意に、彼は気づかないフリをしていたのだ。
『さすがに高校生はまずい。俺は刑事だし……』
「そうやって年齢や職業を言い訳にして逃げないでよ。世話を焼くのも大概にしないと、そのうち自分の首を絞めるよ。現に、今日厄介なことになったじゃない?」
『いや……それはそう……だよな。でもあの子に好かれるようなことは何も……』
「私には経験がないからわからないけど一般論として、話を親身になって聞いてくれる年上の優しいお兄さんがいたら、思春期の子は恋愛感情を抱くものだと思う」
運転席で唸る九条は、赤信号になるとハンドルに額を寄せて項垂《うなだ》れた。彼はまだ唸り声をあげている。
『参った……。俺はどうすればいい?』
「知らない。自分で蒔いた種は責任持って自分で収穫しなよ」
ポタ、ポタ……と、フロントガラスに水滴が着地する音が響く。天気予報通りの雨が降り出した。
少女が九条の知人だと言うことは事態が厄介になるため伏せた。
雪枝を港区芝の紅椿学院高校まで送り届けた帰り道、九条が冴えない表情で溜息をついた。
『あれで良かったんだよな?』
「大人としても警察官としても、学校に行かせた九条くんの対応は適切だった。だけど九条くんって鈍感? 本当に気付いてない?」
『何を?』
「あの子、車にいる私を見た途端に機嫌が悪くなったのよ」
『つまり……?』
ここまで言ってもわからないこの男は心底鈍感だ。
走行中もミラーを通して後部座席の様子は把握していた。雪枝の視線は運転席の九条に注がれていた。あれは恋をする女の眼差しだ。
「雪枝ちゃんは九条くんが好きなの。私でも気付いたのよ?」
九条の様子にそこまで驚きの気配はない。どこかで察していた雪枝の好意に、彼は気づかないフリをしていたのだ。
『さすがに高校生はまずい。俺は刑事だし……』
「そうやって年齢や職業を言い訳にして逃げないでよ。世話を焼くのも大概にしないと、そのうち自分の首を絞めるよ。現に、今日厄介なことになったじゃない?」
『いや……それはそう……だよな。でもあの子に好かれるようなことは何も……』
「私には経験がないからわからないけど一般論として、話を親身になって聞いてくれる年上の優しいお兄さんがいたら、思春期の子は恋愛感情を抱くものだと思う」
運転席で唸る九条は、赤信号になるとハンドルに額を寄せて項垂《うなだ》れた。彼はまだ唸り声をあげている。
『参った……。俺はどうすればいい?』
「知らない。自分で蒔いた種は責任持って自分で収穫しなよ」
ポタ、ポタ……と、フロントガラスに水滴が着地する音が響く。天気予報通りの雨が降り出した。