〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
そうしてホールに置いたデスクチェアに座って2時間が経過した頃、再び大和が姿を見せた。
『神田さーん。悪いんだけどコンビニで夜食買ってきてくれる? 俺は外に出ちゃいけないんでしょ?』
「わかりました。下にコンビニがありましたよね。そこで……」
『違う違う。あそこじゃなくて、ちょっと行った先に違うコンビニあるじゃん? あっちのコンビニに売ってるアメリカンドッグと牛肉コロッケと肉まんが食べたいんだ』
大和が指定したのはマンション一階に入るコンビニとは別会社のコンビニだ。
どこのコンビニのアメリカンドッグもコロッケも肉まんも味にさして違いはないと思うが、そう思うのも美夜が食にこだわりがないだけかもしれない。
持ち場の離脱をインカム越しに九条に伝える。夜食を欲する大和に九条は呆れていた。
{夜食なんか食べずにガキは大人しく寝ろって言えよ}
「大学生に21時就寝も無理な話よ。夜食がないと勉強が捗《はかど》らないって駄々こねてる」
{勉学に励みそうな面もしてねぇくせに。俺が買いに出ようか?}
「大丈夫。すぐ近くだから、さっさと行って戻ってくる」
コンビニはマンションのエントランスを出て直進で徒歩1分の場所にある。行き帰りとコンビニの滞在時間を考慮しても5分程度。10分以内にはマンションに戻れる。
コンビニで大和に頼まれたアメリカンドッグ、コロッケ、肉まんと、自分用に眠気覚ましの栄養ドリンクを購入する。
意外と込み合っていたコンビニの会計待ちで予想よりも持ち場の不在時間が長くなった。帰宅の予想時刻を3分はオーバーしている。
合鍵で二つのオートロックと大和の自宅の鍵を解錠する。玄関を入った時にまず感じたのは、異様な静けさだ。
「……伊吹さん? いますか?」
室内には人のいる気配がない。リビングにも寝室にも、浴室やトイレにも大和の姿は見当たらず、部屋はもぬけの殻だった。
思わず飛び出した舌打ちと同時に彼女はインカムを接続する。
「やられたっ……! ……九条くん、聞こえる?」
{どうした?}
「伊吹が部屋にいない。エントランスから出た様子は?」
{ずっと見張っていたが、こっちはお前の出入りを確認しただけだ。まだマンションの中にいるんじゃないか?}
九条との会話を続けながら美夜はエレベーターで地下一階に降りた。
18時頃にマンション全体のセキュリティ確認をした時は、地下の駐輪スペースには確かに伊吹大和のクロスバイクが駐輪してあった。今はそのスペースには何もない。
「今、地下の駐車場にいる。ここにあった伊吹の自転車がない」
{自転車で地下から出たか。あの野郎……!}
「地下のスロープはエントランスとは反対方向、そこから見落とすのも無理ないよ。とにかく周辺を捜す。まだ遠くには行ってないはず」
{俺も捜しに出る。状況は逐一、報告し合おう}
「了解」
ひとまずインカムの接続を切って美夜はマンションの外に飛び出した。エントランスを出た先で待機していた九条と落ち合い、手分けして大和を捜索する。
『神田さーん。悪いんだけどコンビニで夜食買ってきてくれる? 俺は外に出ちゃいけないんでしょ?』
「わかりました。下にコンビニがありましたよね。そこで……」
『違う違う。あそこじゃなくて、ちょっと行った先に違うコンビニあるじゃん? あっちのコンビニに売ってるアメリカンドッグと牛肉コロッケと肉まんが食べたいんだ』
大和が指定したのはマンション一階に入るコンビニとは別会社のコンビニだ。
どこのコンビニのアメリカンドッグもコロッケも肉まんも味にさして違いはないと思うが、そう思うのも美夜が食にこだわりがないだけかもしれない。
持ち場の離脱をインカム越しに九条に伝える。夜食を欲する大和に九条は呆れていた。
{夜食なんか食べずにガキは大人しく寝ろって言えよ}
「大学生に21時就寝も無理な話よ。夜食がないと勉強が捗《はかど》らないって駄々こねてる」
{勉学に励みそうな面もしてねぇくせに。俺が買いに出ようか?}
「大丈夫。すぐ近くだから、さっさと行って戻ってくる」
コンビニはマンションのエントランスを出て直進で徒歩1分の場所にある。行き帰りとコンビニの滞在時間を考慮しても5分程度。10分以内にはマンションに戻れる。
コンビニで大和に頼まれたアメリカンドッグ、コロッケ、肉まんと、自分用に眠気覚ましの栄養ドリンクを購入する。
意外と込み合っていたコンビニの会計待ちで予想よりも持ち場の不在時間が長くなった。帰宅の予想時刻を3分はオーバーしている。
合鍵で二つのオートロックと大和の自宅の鍵を解錠する。玄関を入った時にまず感じたのは、異様な静けさだ。
「……伊吹さん? いますか?」
室内には人のいる気配がない。リビングにも寝室にも、浴室やトイレにも大和の姿は見当たらず、部屋はもぬけの殻だった。
思わず飛び出した舌打ちと同時に彼女はインカムを接続する。
「やられたっ……! ……九条くん、聞こえる?」
{どうした?}
「伊吹が部屋にいない。エントランスから出た様子は?」
{ずっと見張っていたが、こっちはお前の出入りを確認しただけだ。まだマンションの中にいるんじゃないか?}
九条との会話を続けながら美夜はエレベーターで地下一階に降りた。
18時頃にマンション全体のセキュリティ確認をした時は、地下の駐輪スペースには確かに伊吹大和のクロスバイクが駐輪してあった。今はそのスペースには何もない。
「今、地下の駐車場にいる。ここにあった伊吹の自転車がない」
{自転車で地下から出たか。あの野郎……!}
「地下のスロープはエントランスとは反対方向、そこから見落とすのも無理ないよ。とにかく周辺を捜す。まだ遠くには行ってないはず」
{俺も捜しに出る。状況は逐一、報告し合おう}
「了解」
ひとまずインカムの接続を切って美夜はマンションの外に飛び出した。エントランスを出た先で待機していた九条と落ち合い、手分けして大和を捜索する。