〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
都営地下鉄の大門駅前の大通りに出た。この辺りは背の高いビル群にカラオケや飲食店もあり、人通りの多い地帯だ。
大和に背格好の似た男を見つけては、顔を確認して人違いに落胆してまた走った。
九条は東新橋方面に向かっている。時折インカムに入る報告では九条も大和の発見には至らず、応援の杉浦達は車で捜索に出ている。
口実をつけて美夜を追い出した隙の不可解な脱走。大和は自転車でどこに行ったのだろう。
(犯人に呼び出された? でも脅迫状を冗談半分に受け取っていても、殺人予告をした人間に呼び出されてのこのこ出向く馬鹿はいない。……脅されて仕方なく行くしかなかった?)
犯人が大和を脅すネタは望月莉愛のリベンジポルノだろうが、示談が成立している今、大和がリベンジポルノの一件を怖がる理由は?
闇に月が浮かんでいた。明日が満月の月は、ほとんど綺麗な円形をしている。
追いかけても追いかけても満月に似た月は逃げていく。手を伸ばしても届かない月を追うように、彼女は夜道を走り続けた。
スマートフォンの地図で現在の位置情報を確かめた。位置情報は浜松町二丁目、港町架道橋と呼ばれるトンネルが近くにある。
高架の線路下に作られた港町架道橋は、口が狭い入り口から覗くセピア色の内部が夜間に通行するには少々抵抗がある。入り口の側に無人のクロスバイクが放置されていた。
いつでも腋の下の拳銃を取り出せるようにジャケットの懐に手を忍ばせ、意を決して彼女はトンネルに足を踏み入れる。
洞窟のような不気味な雰囲気を漂わせるトンネルの中央に、ふたつの人影が見えた。
影のひとつがゆらゆらと揺れ、尻餅をついて着地した地面を後ずさっている。間違いない。地面に近いあの影は伊吹大和だ。
『あ……っ……刑事さんっ! 助けてっ!』
美夜に気付いた大和が震える声で助けを呼ぶが、もうひとつの長い黒影《くろかげ》が大和の腹を力強く蹴り飛ばした。
ふたつの影に近付くにつれて、大和を見下ろすもうひとつの影が鮮明になる。黒い背中がこちらを振り向いた瞬間、戦慄の衝撃が美夜を襲った。
「どうしてあなたが……」
トンネルを照らすオレンジの光を背負って、木崎愁が立っていた。見慣れた黒いスーツに黒い革靴、ムゲットで相席した春雷の夜と同じ装いの彼の手には、黒革の手袋とサイレンサーを付けた拳銃が重々しく存在している。
大和に背格好の似た男を見つけては、顔を確認して人違いに落胆してまた走った。
九条は東新橋方面に向かっている。時折インカムに入る報告では九条も大和の発見には至らず、応援の杉浦達は車で捜索に出ている。
口実をつけて美夜を追い出した隙の不可解な脱走。大和は自転車でどこに行ったのだろう。
(犯人に呼び出された? でも脅迫状を冗談半分に受け取っていても、殺人予告をした人間に呼び出されてのこのこ出向く馬鹿はいない。……脅されて仕方なく行くしかなかった?)
犯人が大和を脅すネタは望月莉愛のリベンジポルノだろうが、示談が成立している今、大和がリベンジポルノの一件を怖がる理由は?
闇に月が浮かんでいた。明日が満月の月は、ほとんど綺麗な円形をしている。
追いかけても追いかけても満月に似た月は逃げていく。手を伸ばしても届かない月を追うように、彼女は夜道を走り続けた。
スマートフォンの地図で現在の位置情報を確かめた。位置情報は浜松町二丁目、港町架道橋と呼ばれるトンネルが近くにある。
高架の線路下に作られた港町架道橋は、口が狭い入り口から覗くセピア色の内部が夜間に通行するには少々抵抗がある。入り口の側に無人のクロスバイクが放置されていた。
いつでも腋の下の拳銃を取り出せるようにジャケットの懐に手を忍ばせ、意を決して彼女はトンネルに足を踏み入れる。
洞窟のような不気味な雰囲気を漂わせるトンネルの中央に、ふたつの人影が見えた。
影のひとつがゆらゆらと揺れ、尻餅をついて着地した地面を後ずさっている。間違いない。地面に近いあの影は伊吹大和だ。
『あ……っ……刑事さんっ! 助けてっ!』
美夜に気付いた大和が震える声で助けを呼ぶが、もうひとつの長い黒影《くろかげ》が大和の腹を力強く蹴り飛ばした。
ふたつの影に近付くにつれて、大和を見下ろすもうひとつの影が鮮明になる。黒い背中がこちらを振り向いた瞬間、戦慄の衝撃が美夜を襲った。
「どうしてあなたが……」
トンネルを照らすオレンジの光を背負って、木崎愁が立っていた。見慣れた黒いスーツに黒い革靴、ムゲットで相席した春雷の夜と同じ装いの彼の手には、黒革の手袋とサイレンサーを付けた拳銃が重々しく存在している。