〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
ビジネスホテルの小さな窓に地方都市の夜景が光る。寝心地の悪いシングルベッドに占領された狭い部屋でひとり、彼は味の薄いコーヒーを飲んでいた。
ローカル局のニュース番組がこの地方の気象情報を伝えている。見慣れない地形と土地の名前が並ぶテレビ画面で彼はついつい東京の文字を探してしまい、思わず苦笑いが溢れた。
──【あなたの復讐は完遂されました。アプリを脱会してアンインストールしてください。】──
先ほど〈agent〉アプリに届いたこのメッセージを、彼は何度も黙読する。復讐は完遂された。
これで望月莉愛の復讐は終わった。
彼はメッセージに従ってアプリの脱会の手続きとアンインストールを行う。すっかりホーム画面から消え去った〈agent〉を彼が利用する機会は二度と訪れない
彼が〈agent〉に復讐代行を依頼した人数は六名。
莉愛を集団強姦した瀬田聖、増山昇、伊吹大和、彼らと繋がりを持って強姦を仕向けた小柴優奈、示談金を積んで息子の罪を隠蔽した悪徳弁護士の伊吹啓太郎と伊吹の秘書の前畑亨太。
リベンジポルノの示談についての話し合いで前畑亨太が現れた時の莉愛の凍り付いた顔を、彼は今も覚えている。
澄ました表情で示談の話を進める弁護士秘書は、何度も莉愛を出待ちしては盗聴器や隠しカメラ付きのプレゼントを押し付ける悪質なファンだった。
前畑の行動は次第にエスカレートし、出待ちだけでは飽き足らなくなった前畑は莉愛の後を付け回すストーカーとなった。ストーカーがなに食わぬ顔で示談の話し合いの席に現れたのだ。
莉愛はさぞ怖かっただろう。
ホーム画面に並ぶアイコンから彼は画像フォルダのアイコンをタップする。フォルダには彼と莉愛が過ごした優しい思い出の結晶が詰まっている。
彼と莉愛は愛し合っていた。互いの立場上、公《おおやけ》にできる関係ではなかったが、二人は人知れず愛を育んだ。
莉愛を見出だしたのは彼だった。関東地方のダンスコンクールを観覧していた彼はコンクールの出場者で一際輝く少女を見つけた。
スラリと長い手脚に小さな顔、恵まれたスタイルもさることながら抜群のリズム感にチャーミングな笑顔が可愛い少女は、コンクールで総合三位と健闘していた。
その少女こそ、当時十五歳の高校一年生だった望月莉愛だ。
彼はすぐさま莉愛をスカウトした。彼女はダイヤの原石、磨けばどこまでも光輝ける。
彼の想像を越えて、莉愛はまばゆい輝きを放つ唯一無二の存在となった。
約束されたスターへの階段を二人三脚で駆け上がるうちに、彼が莉愛に心奪われ、莉愛の彼への想いが信頼から恋心に変化するのも時間の問題だった。
ローカル局のニュース番組がこの地方の気象情報を伝えている。見慣れない地形と土地の名前が並ぶテレビ画面で彼はついつい東京の文字を探してしまい、思わず苦笑いが溢れた。
──【あなたの復讐は完遂されました。アプリを脱会してアンインストールしてください。】──
先ほど〈agent〉アプリに届いたこのメッセージを、彼は何度も黙読する。復讐は完遂された。
これで望月莉愛の復讐は終わった。
彼はメッセージに従ってアプリの脱会の手続きとアンインストールを行う。すっかりホーム画面から消え去った〈agent〉を彼が利用する機会は二度と訪れない
彼が〈agent〉に復讐代行を依頼した人数は六名。
莉愛を集団強姦した瀬田聖、増山昇、伊吹大和、彼らと繋がりを持って強姦を仕向けた小柴優奈、示談金を積んで息子の罪を隠蔽した悪徳弁護士の伊吹啓太郎と伊吹の秘書の前畑亨太。
リベンジポルノの示談についての話し合いで前畑亨太が現れた時の莉愛の凍り付いた顔を、彼は今も覚えている。
澄ました表情で示談の話を進める弁護士秘書は、何度も莉愛を出待ちしては盗聴器や隠しカメラ付きのプレゼントを押し付ける悪質なファンだった。
前畑の行動は次第にエスカレートし、出待ちだけでは飽き足らなくなった前畑は莉愛の後を付け回すストーカーとなった。ストーカーがなに食わぬ顔で示談の話し合いの席に現れたのだ。
莉愛はさぞ怖かっただろう。
ホーム画面に並ぶアイコンから彼は画像フォルダのアイコンをタップする。フォルダには彼と莉愛が過ごした優しい思い出の結晶が詰まっている。
彼と莉愛は愛し合っていた。互いの立場上、公《おおやけ》にできる関係ではなかったが、二人は人知れず愛を育んだ。
莉愛を見出だしたのは彼だった。関東地方のダンスコンクールを観覧していた彼はコンクールの出場者で一際輝く少女を見つけた。
スラリと長い手脚に小さな顔、恵まれたスタイルもさることながら抜群のリズム感にチャーミングな笑顔が可愛い少女は、コンクールで総合三位と健闘していた。
その少女こそ、当時十五歳の高校一年生だった望月莉愛だ。
彼はすぐさま莉愛をスカウトした。彼女はダイヤの原石、磨けばどこまでも光輝ける。
彼の想像を越えて、莉愛はまばゆい輝きを放つ唯一無二の存在となった。
約束されたスターへの階段を二人三脚で駆け上がるうちに、彼が莉愛に心奪われ、莉愛の彼への想いが信頼から恋心に変化するのも時間の問題だった。