〜Midnight Eden〜 episode4.【月影】
文京区小日向に建つ三階建てのマンションに列をなして雪崩れ込む警察関係者を、付近の住民達が不安げに見つめる。
伊吹啓太郎の秘書、前畑亨太の自宅はここの二階だ。
前畑の給料が低いのか単に住居に金をかけない主義だったのかは知らないが、東京弁護士会副会長秘書の肩書きのわりには質素なマンションの一室に足を踏み入れた小山真紀と杉浦誠は、しばし言葉を失った。
「なにこれ。部屋中が莉愛だらけ……」
『なんだか薄気味悪い狂気を感じますね』
1LDKの室内は望月莉愛一色だった。
壁や天井にまで莉愛のポスターが貼られ、書棚には莉愛の写真集、フルリールのライブDVDにCD、雑誌の切り抜きをファイリングしたファイル、莉愛を模した等身大フィギュアまで飾られている。
「アイドルのファンの部屋をガサ入れした経験はあるけど、ここまで壁も天井も部屋中がアイドルのグッズまみれだった部屋は初めて」
『俺もですよ。この等身大フィギュア、高値で取引されていた望月莉愛の違法フィギュアですよ。莉愛の所属事務所から販売されたものではなく、美大生のファンが自主製作した人形を販売して問題になっていました』
等身大だけあり、フィギュアの大きさは莉愛の身長と同じサイズ。
瞳はガラス玉、髪や肌はさすがに本物そっくりとは言えないが、胸の膨らみやウエストのくびれ、臀部《でんぶ》から太ももまでの曲線、膝下の長さなどのスタイルは、写真集に載る莉愛の水着写真と比べても大差なく作られている。
「スリーサイズまで把握して作り込んでるよね。衣装を脱がすと女の裸になって気味が悪い」
着脱可能な衣装の下は、中心部の突起が桃色に着色された胸部がお目見えする。特に精巧に作られた下半身を目にした真紀は、顔をしかめた。
「やだ、性器の見た目や内部まで凝ってるくせに下の毛は生えてないじゃない。莉愛は生理が来てない子どもじゃないのよ?」
『アイドルは陰毛が生えないとでも思っているんでしょうか。それにこのフィギュアは自慰専用ですよ。人形の下半身のここに男性器を挿し込めるようになっていますし』
「ああ、そういうことか。これを作った製作者も、それを買って自慰してる前畑も気持ち悪い……。前畑が莉愛にファン以上の感情を抱いていたのは確定ね。犯人に協力する動機としては充分」
真紀の手で再び衣装を着せられた莉愛の等身大フィギュアも捜査員の手で外に運ばれていく。
伊吹啓太郎の秘書、前畑亨太の自宅はここの二階だ。
前畑の給料が低いのか単に住居に金をかけない主義だったのかは知らないが、東京弁護士会副会長秘書の肩書きのわりには質素なマンションの一室に足を踏み入れた小山真紀と杉浦誠は、しばし言葉を失った。
「なにこれ。部屋中が莉愛だらけ……」
『なんだか薄気味悪い狂気を感じますね』
1LDKの室内は望月莉愛一色だった。
壁や天井にまで莉愛のポスターが貼られ、書棚には莉愛の写真集、フルリールのライブDVDにCD、雑誌の切り抜きをファイリングしたファイル、莉愛を模した等身大フィギュアまで飾られている。
「アイドルのファンの部屋をガサ入れした経験はあるけど、ここまで壁も天井も部屋中がアイドルのグッズまみれだった部屋は初めて」
『俺もですよ。この等身大フィギュア、高値で取引されていた望月莉愛の違法フィギュアですよ。莉愛の所属事務所から販売されたものではなく、美大生のファンが自主製作した人形を販売して問題になっていました』
等身大だけあり、フィギュアの大きさは莉愛の身長と同じサイズ。
瞳はガラス玉、髪や肌はさすがに本物そっくりとは言えないが、胸の膨らみやウエストのくびれ、臀部《でんぶ》から太ももまでの曲線、膝下の長さなどのスタイルは、写真集に載る莉愛の水着写真と比べても大差なく作られている。
「スリーサイズまで把握して作り込んでるよね。衣装を脱がすと女の裸になって気味が悪い」
着脱可能な衣装の下は、中心部の突起が桃色に着色された胸部がお目見えする。特に精巧に作られた下半身を目にした真紀は、顔をしかめた。
「やだ、性器の見た目や内部まで凝ってるくせに下の毛は生えてないじゃない。莉愛は生理が来てない子どもじゃないのよ?」
『アイドルは陰毛が生えないとでも思っているんでしょうか。それにこのフィギュアは自慰専用ですよ。人形の下半身のここに男性器を挿し込めるようになっていますし』
「ああ、そういうことか。これを作った製作者も、それを買って自慰してる前畑も気持ち悪い……。前畑が莉愛にファン以上の感情を抱いていたのは確定ね。犯人に協力する動機としては充分」
真紀の手で再び衣装を着せられた莉愛の等身大フィギュアも捜査員の手で外に運ばれていく。