〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
ジョーカーが起こしたと思われる殺人事件は立証できない事件が多く、今のままでは愁自身の自白がない限り愁を逮捕できない。
だから捜査本部は方針を変えた。木崎愁のウィークポイントに狙いを定め、揺さぶりをかける手法に打って出たのだ。
『伶に似ているかと言われると、見た目は似ていますね』
「目元はサングラスで覆われていますが、これがサングラスを取り除いてモンタージュのシミュレーションをしたケイの顔です。夏木伶さんの顔写真は、大学のホームページに掲載されていた写真を使用しました。シミュレーション画像と合わせると、ケイと伶さんは骨格、目元、口元、鼻の形がほぼ一致します」
伶が在籍する法栄大学のホームページから、受験生に向けた学校紹介ページに掲載された夏木伶の顔写真をモンタージュ作成用に拝借した。
シミュレーションをした結果、優奈の恋人の“ケイ”と夏木伶の顔の骨格、目、鼻、口の位置や形の類似度は96.7%。ほぼ同一人物との結果が出ている。
タブレット端末に表示されたシミュレーション画像を見つめる愁の瞳はとても暗い。この場にいる誰よりも愁の深層に近い美夜であっても、愁の感情はまったく読み取れなかった。
『写真の男が伶であっても、それだけでは伶が小柴優奈と親しい関係にあったという証拠にしかならない。アイツの交遊関係には干渉しない主義です。芸能人との付き合いは刑罰の対象にはなりませんよね』
「お付き合いだけでしたら個人の自由です。ですが、小柴優奈は薬物使用の常習でした。優奈の自宅からは数種類の違法薬物が見つかっています」
『伶も女と一緒に薬物を使用していたと?』
「そうとは言っていません。データばかりで恐縮ですが、もう一枚、こちらをご覧ください」
真紀が愁に提示した三枚目の写真は、小袋に包まれたオレンジ色の粉末の写真だ。
「この粉末の名前は〈禁断の果実〉。脳に性的刺激を与える中東製造の媚薬であり、今の日本では入手困難な違法薬物です。かつて〈禁断の果実〉の密輸ルートは、犯罪組織カオスが握っていました。夏木十蔵とカオスのキングはビジネスパートナーの間柄にありましたよね。カオス壊滅後の密輸ルートは夏木会長に譲渡されたのではありませんか?」
『夏木十蔵が裏社会の人間とこそこそ取引している噂は耳にします。そういった話は会長に直接聞いてください』
夏木十蔵とカオスの話題に切り込まれても愁は白《しら》を切り通す。のらりくらりと警察の追及をやり過ごす愁は、そうまでして何を守ろうとしている?
「小柴優奈の殺害も優奈の恋人のケイを調べていた笛木さんの殺害も、犯人は不明です。優奈がどうやって〈禁断の果実〉を入手したかもわかっていない。もしも優奈に〈禁断の果実〉を与えた人間がケイならば、ケイは〈禁断の果実〉の密輸ルートを持つ夏木十蔵に近しい人間です」
『それが伶だと?』
「可能性としては、の話です。木崎さんはどう思われますか?」
『どうも何も。自分が関知していない事柄に持論を述べる気はありません』
狼狽えもせず激昂するでもない。落ち着いた素振りの木崎愁のポーカーフェイスはいまだ崩れず、しぶとく本性を表さない愁に、美夜と共に隣室で聴取を傍聴する上野一課長や百瀬警部はヤキモキしていた。
だから捜査本部は方針を変えた。木崎愁のウィークポイントに狙いを定め、揺さぶりをかける手法に打って出たのだ。
『伶に似ているかと言われると、見た目は似ていますね』
「目元はサングラスで覆われていますが、これがサングラスを取り除いてモンタージュのシミュレーションをしたケイの顔です。夏木伶さんの顔写真は、大学のホームページに掲載されていた写真を使用しました。シミュレーション画像と合わせると、ケイと伶さんは骨格、目元、口元、鼻の形がほぼ一致します」
伶が在籍する法栄大学のホームページから、受験生に向けた学校紹介ページに掲載された夏木伶の顔写真をモンタージュ作成用に拝借した。
シミュレーションをした結果、優奈の恋人の“ケイ”と夏木伶の顔の骨格、目、鼻、口の位置や形の類似度は96.7%。ほぼ同一人物との結果が出ている。
タブレット端末に表示されたシミュレーション画像を見つめる愁の瞳はとても暗い。この場にいる誰よりも愁の深層に近い美夜であっても、愁の感情はまったく読み取れなかった。
『写真の男が伶であっても、それだけでは伶が小柴優奈と親しい関係にあったという証拠にしかならない。アイツの交遊関係には干渉しない主義です。芸能人との付き合いは刑罰の対象にはなりませんよね』
「お付き合いだけでしたら個人の自由です。ですが、小柴優奈は薬物使用の常習でした。優奈の自宅からは数種類の違法薬物が見つかっています」
『伶も女と一緒に薬物を使用していたと?』
「そうとは言っていません。データばかりで恐縮ですが、もう一枚、こちらをご覧ください」
真紀が愁に提示した三枚目の写真は、小袋に包まれたオレンジ色の粉末の写真だ。
「この粉末の名前は〈禁断の果実〉。脳に性的刺激を与える中東製造の媚薬であり、今の日本では入手困難な違法薬物です。かつて〈禁断の果実〉の密輸ルートは、犯罪組織カオスが握っていました。夏木十蔵とカオスのキングはビジネスパートナーの間柄にありましたよね。カオス壊滅後の密輸ルートは夏木会長に譲渡されたのではありませんか?」
『夏木十蔵が裏社会の人間とこそこそ取引している噂は耳にします。そういった話は会長に直接聞いてください』
夏木十蔵とカオスの話題に切り込まれても愁は白《しら》を切り通す。のらりくらりと警察の追及をやり過ごす愁は、そうまでして何を守ろうとしている?
「小柴優奈の殺害も優奈の恋人のケイを調べていた笛木さんの殺害も、犯人は不明です。優奈がどうやって〈禁断の果実〉を入手したかもわかっていない。もしも優奈に〈禁断の果実〉を与えた人間がケイならば、ケイは〈禁断の果実〉の密輸ルートを持つ夏木十蔵に近しい人間です」
『それが伶だと?』
「可能性としては、の話です。木崎さんはどう思われますか?」
『どうも何も。自分が関知していない事柄に持論を述べる気はありません』
狼狽えもせず激昂するでもない。落ち着いた素振りの木崎愁のポーカーフェイスはいまだ崩れず、しぶとく本性を表さない愁に、美夜と共に隣室で聴取を傍聴する上野一課長や百瀬警部はヤキモキしていた。