〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
「少女の名前は夏木舞、夏木コーポレーションの夏木会長の娘です」
会議室は静かだった。上野も真紀も百瀬も、しかめ面で口を閉じている。
重たい空気に戸惑いの表情を浮かべるのは科捜研の職員と渋谷署の二人の刑事、美夜の隣にいる九条だけだった。
真紀が美夜に視線を向ける。
「神田さん、これはあなたのプライベートに踏み込む質問になるけど、いい?」
「はい」
「夏木会長の娘とどこで、どうやって知り合ったの?」
「……知人が夏木コーポレーションの会長秘書をしているんです。その人は夏木舞と彼女の兄と三人で同じ家に同居していて、その人の家を訪問した時に夏木舞と、彼女の兄に会いました。舞と会ったのはその一度きりです」
嘘はついていない。ある一点を除いてすべて真実だ。
知人と言う便利な単語でオブラートに包んだ愁との関係。その知人が肉体関係を持った仲であることは、この件においては関係がない。
『その“知人”に至急、連絡はとれるか? 秘書を通じて、少女の父親である夏木会長への面会を頼みたい』
「……交渉してみます」
これは一課長命令だ。会議の終了後、トークアプリの友だちリストから、二度と連絡しないと誓った木崎愁の名前をタップした。
夏木十蔵への面会を依頼する旨を綴ったメッセージを愁宛てに送る。舞が関わっていることを匂わせれば、愁も美夜の連絡を無視できない。
『知人って男だろ』
九条と二人きりの会議室。会議は終わったのだから立ち去ればいいのに、彼はまだ隣の席にいた。
「男でも女でも関係ないでしょ」
『あの口振りからして、お前の知人が男だと全員が気付いたと思う。そこはお前のプライベートだから、誰も突っ込まないけどな。秘書が神田の彼氏だろうと雨宮失踪とは関係がない』
関係がない? 本当にそうだろうか?
木崎愁が持つ顔は夏木十蔵の秘書の顔だけではない。あの男は伊吹大和を殺した殺人犯。
愁は銃の扱いも手慣れていた。
美夜を抱きしめたまま片手で正確に大和の頭を撃ち抜けるのは、相当な腕前だ。彼の銃の腕は一朝一夕の付け焼き刃ではなく、長年の経験と勘で培われている。
──[今日18時。夏木コーポレーション、一階エントランス]──
メッセージの送信から約5分後。それだけの簡素な内容の返信が送られてきた。
18時まであと2時間。
彼と、どんな顔をして会えばいい?
会議室は静かだった。上野も真紀も百瀬も、しかめ面で口を閉じている。
重たい空気に戸惑いの表情を浮かべるのは科捜研の職員と渋谷署の二人の刑事、美夜の隣にいる九条だけだった。
真紀が美夜に視線を向ける。
「神田さん、これはあなたのプライベートに踏み込む質問になるけど、いい?」
「はい」
「夏木会長の娘とどこで、どうやって知り合ったの?」
「……知人が夏木コーポレーションの会長秘書をしているんです。その人は夏木舞と彼女の兄と三人で同じ家に同居していて、その人の家を訪問した時に夏木舞と、彼女の兄に会いました。舞と会ったのはその一度きりです」
嘘はついていない。ある一点を除いてすべて真実だ。
知人と言う便利な単語でオブラートに包んだ愁との関係。その知人が肉体関係を持った仲であることは、この件においては関係がない。
『その“知人”に至急、連絡はとれるか? 秘書を通じて、少女の父親である夏木会長への面会を頼みたい』
「……交渉してみます」
これは一課長命令だ。会議の終了後、トークアプリの友だちリストから、二度と連絡しないと誓った木崎愁の名前をタップした。
夏木十蔵への面会を依頼する旨を綴ったメッセージを愁宛てに送る。舞が関わっていることを匂わせれば、愁も美夜の連絡を無視できない。
『知人って男だろ』
九条と二人きりの会議室。会議は終わったのだから立ち去ればいいのに、彼はまだ隣の席にいた。
「男でも女でも関係ないでしょ」
『あの口振りからして、お前の知人が男だと全員が気付いたと思う。そこはお前のプライベートだから、誰も突っ込まないけどな。秘書が神田の彼氏だろうと雨宮失踪とは関係がない』
関係がない? 本当にそうだろうか?
木崎愁が持つ顔は夏木十蔵の秘書の顔だけではない。あの男は伊吹大和を殺した殺人犯。
愁は銃の扱いも手慣れていた。
美夜を抱きしめたまま片手で正確に大和の頭を撃ち抜けるのは、相当な腕前だ。彼の銃の腕は一朝一夕の付け焼き刃ではなく、長年の経験と勘で培われている。
──[今日18時。夏木コーポレーション、一階エントランス]──
メッセージの送信から約5分後。それだけの簡素な内容の返信が送られてきた。
18時まであと2時間。
彼と、どんな顔をして会えばいい?