〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
『あの野郎、ご丁寧に貸金庫にまで保管してたのか。家、職場、奴の車の中までデータのコピーがないかチェックしたんだが、銀行の貸金庫は見落としてた』
「どうせ雨宮の自宅や会社に出入りした証拠は消し去ったんでしょうね。マンションや会社の防犯カメラ映像もハッキングでもして消した?」
『ご名答。うちには優秀なエンジニアがいるからな。消えた防犯カメラの映像は、お前らが足掻いたところで見つけられねぇよ』
刑事に追及されても、余裕綽々なポーカーフェイスを崩さない彼の言動が癪に障る。通りに面した赤坂警察署の前を通過する時に顔を伏せてしまったのは、犯罪者が運転する車に同乗している罪悪感のせい。
『バラして海に沈めたつもりなんだが、死体の処理が甘かったか。骨の一部が流れ着くとはなぁ』
「雨宮を殺したと認めるのね?」
『そう、殺したのは俺だ。でもお前は俺が雨宮を殺したとは上司に報告できない。側に相棒もいないプライベートな時間に俺の自白を引き出したとなれば、俺と自分の関係を上司に話す必要が出てくる。俺とのことは、隠せるなら上司にも同僚にも隠したままでいたい。違うか?』
愁の指摘は図星だった。返答に窮した美夜は、震える唇を結んで愁の横顔を見据える。
「私達の関係って何?」
『セックスした関係?』
「そんな生々しく言わないで」
『肉体関係って言葉よりは生々しくはない』
「どっちもしていることは同じよ」
次の交差点を左折すると車が下り坂の道に入った。赤坂の名前に相応しく、下りと上りの坂道がしばらく続く。
『何を怒ってる? 会社に来た時からずっと不機嫌だよな』
「……生理が来た。今、2日目」
『良かったな』
「それだけ?」
『他にあるか? あん時、一晩中ヤッてたからなぁ。確率はフィフティフィフティでもヤることはヤったんだ。ガキができてなくて良かったな、で間違いはないだろ』
美夜が刑事と知っていて愁は抱いた。愁が人殺しと知っていて美夜は抱かれた。
衝動的な肉体の求め合いの果てに待つ、望まぬ命の存在。
舞を身籠った紫音の気持ちは想像するしかないが、彼女も苦しんだかもしれない。夏木会長と紫音の間に愛情があったとしても、身籠ったのは夫ではなく不倫相手の子どもだ。
同じ女として紫音の生き辛さが少しは理解できる。以前の美夜なら、紫音が二人の子どもを残して自殺を選んだことにも理解を示せなかっただろう。
「どうせ雨宮の自宅や会社に出入りした証拠は消し去ったんでしょうね。マンションや会社の防犯カメラ映像もハッキングでもして消した?」
『ご名答。うちには優秀なエンジニアがいるからな。消えた防犯カメラの映像は、お前らが足掻いたところで見つけられねぇよ』
刑事に追及されても、余裕綽々なポーカーフェイスを崩さない彼の言動が癪に障る。通りに面した赤坂警察署の前を通過する時に顔を伏せてしまったのは、犯罪者が運転する車に同乗している罪悪感のせい。
『バラして海に沈めたつもりなんだが、死体の処理が甘かったか。骨の一部が流れ着くとはなぁ』
「雨宮を殺したと認めるのね?」
『そう、殺したのは俺だ。でもお前は俺が雨宮を殺したとは上司に報告できない。側に相棒もいないプライベートな時間に俺の自白を引き出したとなれば、俺と自分の関係を上司に話す必要が出てくる。俺とのことは、隠せるなら上司にも同僚にも隠したままでいたい。違うか?』
愁の指摘は図星だった。返答に窮した美夜は、震える唇を結んで愁の横顔を見据える。
「私達の関係って何?」
『セックスした関係?』
「そんな生々しく言わないで」
『肉体関係って言葉よりは生々しくはない』
「どっちもしていることは同じよ」
次の交差点を左折すると車が下り坂の道に入った。赤坂の名前に相応しく、下りと上りの坂道がしばらく続く。
『何を怒ってる? 会社に来た時からずっと不機嫌だよな』
「……生理が来た。今、2日目」
『良かったな』
「それだけ?」
『他にあるか? あん時、一晩中ヤッてたからなぁ。確率はフィフティフィフティでもヤることはヤったんだ。ガキができてなくて良かったな、で間違いはないだろ』
美夜が刑事と知っていて愁は抱いた。愁が人殺しと知っていて美夜は抱かれた。
衝動的な肉体の求め合いの果てに待つ、望まぬ命の存在。
舞を身籠った紫音の気持ちは想像するしかないが、彼女も苦しんだかもしれない。夏木会長と紫音の間に愛情があったとしても、身籠ったのは夫ではなく不倫相手の子どもだ。
同じ女として紫音の生き辛さが少しは理解できる。以前の美夜なら、紫音が二人の子どもを残して自殺を選んだことにも理解を示せなかっただろう。