〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
 愁が美夜の素性を知るに至った経緯は偶然の悪戯《いたずら》でしかない。

「光が事件を起こしたのは6月よね。その時から刑事と知っていたくせに、どうして私に近付いたの? ハニートラップでも仕掛けて利用できると思った?」
『最初はそうだったかもしれない』
「その煮え切らない言い方が益々腹立つ」
『だけど男に騙されて警察の機密を漏らすような女じゃないとすぐにわかった。お前は器用じゃない。器用な女なら迷わず俺を逮捕してる』

 腕に抱いた肩は震えていた。目尻に浮かぶ彼女の涙に舌で触れると、今度は彼女の方から唇を重ねてくる。
表面をなぞるだけのキスの後に紡がれた言葉は、何度目かの彼女の糾弾。

「ずるいよね。愁は全部がずるい」

 ずるいのはどちらだろう。
大粒の涙を流す神田美夜は綺麗だった。桃色に蒸気する頬も、濡れた真っ赤な唇も、潤んだ漆黒の瞳も、彼女のすべてが愁を誘う。
彼女のすべてが欲しくなる。

愛して、愛して、壊れるまで愛したい。

「もう……会いに来ないで。これ以上一緒にいれば二人とも苦しくなる。二度と会わない、連絡もしない」
『わかってる。今夜が最後だ』

 美夜の涙と呼応するような遣《や》らずの雨が窓に打ち付ける。先ほどまで小降りだった雨はだんだん強く、どこにも辿り着けない二人の恋に、天の女神も泣いていた。

空も涙。心も、涙。

 最低な男は最低に優しく彼女に迫る。雨の匂いを含んだ服を互いに剥がして、愁と美夜が導かれた先はバスルーム。

 愁の唇が、指先が、美夜の全身を駆け巡る。これが最後だからと互いの肌にぬくもりを埋め、水滴で濡れた白肌に刻んだ赤い刻印はどこまでも増え続けた。

 二つの乳房の隙間を這って愁の唇が下降する。軽々と持ち上げた美夜の片脚を彼は浴槽の縁に下ろした。

明るい浴室で卑猥な体勢をさせられた恥じらいで美夜は脚を閉じようともがくが、開いた太ももは愁の腕でホールドされ、片脚だけで立つ彼女の細い腰を愁は掴んで離さない。

 湿った茂みの奥に真っ赤な実が熟している。実の周りを舌先で焦らしながら、蜜を溢れさせる割れ目を舌でなぞるだけで、美夜は快感の波に身体を震わせていた。

「……っ、あっ……愁、もうやめて……ぁっ……んっ!」

 制御しきれないエクスタシーに戸惑う彼女に、愁は優しく欲の解放を促した。愁が美夜を愛する水音と、美夜から漏れる甘い喘ぎ声が反響し、互いが立てる物音が互いの理性を破壊する。

美夜の理性は愁の愛に壊され続け、彼女はただの女になった。
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