〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
 事件発生当時、グラウンドで体育の授業中だった中等部三年の生徒三十五名、高等部二年の生徒三十九名、中等部と高等部の二人の女性体育教師はグラウンド側の裏門から脱出、警察が現在対策本部を立てているこの小学校に助けを求めて避難した。

 体育教師が避難先の小学校から110番通報したのが午後12時13分。教師と生徒達の話では、まず正門側で男の叫び声とピストルの発砲音が聞こえた。

その後に女の声で学校を占拠したと校内放送が入った。たまたま体育の授業中でグラウンドに出ていた二人の教師と中等部と高等部の生徒七十四人だけが、犯人グループの目に留まらず難を逃れたのだ。

 通報者の守衛や職員室にいる教員とは連絡が付かない。極めつけが、12時20分に動画配信サービスとツイッターにて投稿された夏木舞と夏木十蔵の醜聞を訴えるあの告発動画と、舞を晒し者にした写真だ。

校内には中等部と高等部、教師を含めて一四〇〇人近い人間が人質にとられている。

 警視庁は捜査一課と特殊班捜査係を中心に特別捜査本部を設置、紅椿学院高校のサーバーに侵入したサイバー犯罪対策課が、学校の防犯カメラ映像のハッキングに成功した。

 犯人グループによる教室占拠の数分前、正門前に設けられた防犯カメラの映像には、守衛が銃で撃たれる惨劇の様子が映っていた。

この事件はすでに学校の立てこもりだけではなく、守衛の殺人事件に発展している。殺害された守衛は青井陽史、勤続三十年を越えるベテランの門衛《もんえい》だった。

 学校の正門前、昇降口、各棟のフロアに繋がる階段と廊下、複数の場所に設置された防犯カメラ映像から犯人グループの身元を数名特定。

堂々と、身元と素顔を動画で明かしたリゾートホテル計画反対派メンバーのリーダーである滝本航大の他は、四十代から五十代と思われる男女が三人、三十代から十代後半と見られる男女が六人、合計十人の姿が確認できた。

大橋雪枝を加えると犯人グループの数は十一人だ。

 三十代の男と二十代の男ひとりは、夏に会長と若頭、幹部を殺害されて壊滅した木羽会の二次団体構成員だった。生き残りのヤクザの端くれ二人の身元は梶浦と吉井。

三十代の梶浦は恐喝と暴行の罪で刑務所に3年服役、二十代の吉井は高校時代に傷害事件を起こして少年院に入っていた前科がある。

守衛を殺したのも三田署の刑事に威嚇発砲を仕掛けたのも、木羽会の梶浦と吉井である。対策本部のメンバーに組織犯罪対策部の百瀬警部がいるのは、木羽会の残党が関わっているためだ。
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