〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
「夏に木羽会を一夜で壊滅させた人間ってやっぱり……」
『俺だけど?』
シャツの上から防弾ベストを装着した美夜の身体が、愁の両腕に包まれる。久方ぶりに全身に感じた愁の体温に、速くなる鼓動と熱くなる頬。
『俺がどんな気持ちでお前の前に現れたか、知りたい?』
「知りたくない」
本当の気持ちは口に出した言葉とは裏腹。耳元に触れた愁の吐息が、甘く妖艶に美夜を惑わせた。
『会いたかった』
「……だから今、言わないでよ」
ずるい男は平気で女の心を壊して弄《もてあそ》ぶ。
二度と会わないと誓ったくせに何食わぬ顔で美夜の前に現れた男は、特別に甘い声と甘い瞳でいとも容易く彼女の心を捕らえてしまう。
溢れる気持ちは叶えてはいけない恋心。
これ以上、触れ合ってはいけない。
これ以上、好きになってはいけない。
潤んだ美夜の瞳の端に愁の唇が触れた。軽く添えられた目元のキスが、美夜をただの女に変えていく。
迫る愁に追い込まれた美夜の身体が、テーブルの角にぶつかって彼女は逃げ道を失った。子ども達が創造性豊かな作品を生み出す図工室のテーブルに乗り上げた美夜を、彼は容赦なく捕食する。
「愁っ、待って……っ!」
木崎愁は、待てと言われて大人しく待つ男ではない。
耳から首筋にかけて触れた愁の唇の感覚が身体の奥を熱く燃やす。愁の手でシャツのボタンが二つ外され、鎖骨の下に新たに刻まれたキスマーク。
彼の舌先が通過した部分は羞恥で火照り、唇で耳たぶを優しく挟まれた時は、甘美な喘ぎ声と共に吐き出したとろりとした分泌物が、ショーツの内側を湿らせた。
軽やかなリップ音を響かせて愁は美夜の肌を味わう。そのまま唇に着地しようとする彼から美夜はそっと、真っ赤に染めた顔をそらした。
「ごめんなさい。キスは……できない。舞ちゃんが怖い思いをしてるのに、私達がこんなことしてる場合じゃない。誰が入って来るかもわからないし……」
本当はこのままキスをしたかった。本当はこのまま抱いて欲しかった。
けれど肌に感じた快楽の刺激も下半身に感じた欲情のとろみも今はなかったことにして、彼女は愁の熱に犯されたがる女の部分を必死に封じる。
忘れてはいけない警察官の責務が、美夜の最後のストッパーだ。
『そうだな。俺も今は頭ん中の半分以上が舞で占めてる。立てこもってる奴ら全員、俺が殺してもいいくらいだ。お前がいなかったら、たぶん皆殺しにしてる』
蠱惑《こわく》のベールの片隅で彼の怒りが震えていた。
ポーカーフェイスを剥がさない男が美夜にだけ見せた弱々しい苦笑いが、女と刑事の狭間を彷徨《さまよ》う彼女の覚悟をまた揺らがせる。
甘えていたのは愁の方だ。ぬくもりを欲しがったのも愁の方。美夜の肌を感じる時間は、愁の心を整える時間でもあった。
『俺が殺す前に、つまんねぇ連中に撃たれて死ぬなよ?』
「そっちこそ。自分から大見得切って乗り込んで死ぬのはカッコ悪いからね。だから早く防弾ベスト着て」
いつもの憎らしい顔に戻った愁に防弾ベストを押し付けた。こんなものは必要ないと突っ返す愁の身体に無理やり防弾ベストを装着させ、美夜も自分の準備に入った。
『俺だけど?』
シャツの上から防弾ベストを装着した美夜の身体が、愁の両腕に包まれる。久方ぶりに全身に感じた愁の体温に、速くなる鼓動と熱くなる頬。
『俺がどんな気持ちでお前の前に現れたか、知りたい?』
「知りたくない」
本当の気持ちは口に出した言葉とは裏腹。耳元に触れた愁の吐息が、甘く妖艶に美夜を惑わせた。
『会いたかった』
「……だから今、言わないでよ」
ずるい男は平気で女の心を壊して弄《もてあそ》ぶ。
二度と会わないと誓ったくせに何食わぬ顔で美夜の前に現れた男は、特別に甘い声と甘い瞳でいとも容易く彼女の心を捕らえてしまう。
溢れる気持ちは叶えてはいけない恋心。
これ以上、触れ合ってはいけない。
これ以上、好きになってはいけない。
潤んだ美夜の瞳の端に愁の唇が触れた。軽く添えられた目元のキスが、美夜をただの女に変えていく。
迫る愁に追い込まれた美夜の身体が、テーブルの角にぶつかって彼女は逃げ道を失った。子ども達が創造性豊かな作品を生み出す図工室のテーブルに乗り上げた美夜を、彼は容赦なく捕食する。
「愁っ、待って……っ!」
木崎愁は、待てと言われて大人しく待つ男ではない。
耳から首筋にかけて触れた愁の唇の感覚が身体の奥を熱く燃やす。愁の手でシャツのボタンが二つ外され、鎖骨の下に新たに刻まれたキスマーク。
彼の舌先が通過した部分は羞恥で火照り、唇で耳たぶを優しく挟まれた時は、甘美な喘ぎ声と共に吐き出したとろりとした分泌物が、ショーツの内側を湿らせた。
軽やかなリップ音を響かせて愁は美夜の肌を味わう。そのまま唇に着地しようとする彼から美夜はそっと、真っ赤に染めた顔をそらした。
「ごめんなさい。キスは……できない。舞ちゃんが怖い思いをしてるのに、私達がこんなことしてる場合じゃない。誰が入って来るかもわからないし……」
本当はこのままキスをしたかった。本当はこのまま抱いて欲しかった。
けれど肌に感じた快楽の刺激も下半身に感じた欲情のとろみも今はなかったことにして、彼女は愁の熱に犯されたがる女の部分を必死に封じる。
忘れてはいけない警察官の責務が、美夜の最後のストッパーだ。
『そうだな。俺も今は頭ん中の半分以上が舞で占めてる。立てこもってる奴ら全員、俺が殺してもいいくらいだ。お前がいなかったら、たぶん皆殺しにしてる』
蠱惑《こわく》のベールの片隅で彼の怒りが震えていた。
ポーカーフェイスを剥がさない男が美夜にだけ見せた弱々しい苦笑いが、女と刑事の狭間を彷徨《さまよ》う彼女の覚悟をまた揺らがせる。
甘えていたのは愁の方だ。ぬくもりを欲しがったのも愁の方。美夜の肌を感じる時間は、愁の心を整える時間でもあった。
『俺が殺す前に、つまんねぇ連中に撃たれて死ぬなよ?』
「そっちこそ。自分から大見得切って乗り込んで死ぬのはカッコ悪いからね。だから早く防弾ベスト着て」
いつもの憎らしい顔に戻った愁に防弾ベストを押し付けた。こんなものは必要ないと突っ返す愁の身体に無理やり防弾ベストを装着させ、美夜も自分の準備に入った。