〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
九条を取り巻いていた険悪な空気も緩和した。ジャケットを脱いだ九条に防弾ベストを手渡したのは愁だ。
『そっちの機嫌が悪かったのは、相棒を横取りされた嫉妬もあっただろ。廊下に居たよな』
『やっぱりあんたは気に入らねぇ。俺の気配に気付いていたくせに、我が物顔で神田から離れなかったよな。当然のように自分の女扱いしやがって。そういうとこがすっげぇムカつく』
愁と九条の意味のわからない会話に、マガジンに弾を装填していた美夜の動きが止まった。
「今のどういう意味?」
『お前らがここでイチャついてる真っ最中に俺は廊下で待ってたんだよ。目の前の誰かさんしか見えてなかった神田は、気付いてなかったみたいだな』
特に小学校は教室の扉を部分的に透明か磨り硝子のガラス窓にしている学校が多い。この学校も例外ではなく、図書室や図工室の扉も上部が透明なガラス窓の造りだ。
先ほどの愁との一部始終を、扉一枚隔てた廊下で九条が見聞きしていた。キスは回避したものの、男に酔う姿を九条に見られてしまった衝撃が美夜の視界を歪ませる。
『神田が男が絡むとポンコツだってよぉくわかった。あんな場面でなければ、お前なら外の気配に気付くのになぁ?』
「それ以上言わないで。自分の馬鹿さ加減に落ち込む」
二つ隣の図書室には多くの刑事が集う対策本部が置かれている。深く考えなくても、誰に目撃されるかわからない場で個人的な関係にある男との軽率な触れ合いはタブー。
目撃者が美夜の心情に理解のある九条だっただけ、まだマシだ。
愁も廊下にいた九条の存在を知っていたなら、美夜がキスを避ける前にどうして自重しなかった?
しかもこの男は、どさくさ紛れに鎖骨の周辺にキスマークを二つもつけている。
美夜が恨めしげに睨んでも、愁は得意の澄まし顔。その憎たらしいポーカーフェイスを一発殴ってやりたい。
とにかく今は、こちら側で揉めている暇も色恋に現《うつつ》を抜かす余裕もない。
間もなく出動時刻だ。暑苦しいバディと冷淡な殺し屋を引き連れた美夜の耳には上司と繋がるインカムが、ジャケットの胸元には小型のビデオカメラを取り付け、腋の下には拳銃を装備。
爆弾のタイムリミットまで残り1時間半。
覚悟を決めた彼女達は人質一四〇〇人の命を背負って、紅椿学院高校への道を辿った。
『そっちの機嫌が悪かったのは、相棒を横取りされた嫉妬もあっただろ。廊下に居たよな』
『やっぱりあんたは気に入らねぇ。俺の気配に気付いていたくせに、我が物顔で神田から離れなかったよな。当然のように自分の女扱いしやがって。そういうとこがすっげぇムカつく』
愁と九条の意味のわからない会話に、マガジンに弾を装填していた美夜の動きが止まった。
「今のどういう意味?」
『お前らがここでイチャついてる真っ最中に俺は廊下で待ってたんだよ。目の前の誰かさんしか見えてなかった神田は、気付いてなかったみたいだな』
特に小学校は教室の扉を部分的に透明か磨り硝子のガラス窓にしている学校が多い。この学校も例外ではなく、図書室や図工室の扉も上部が透明なガラス窓の造りだ。
先ほどの愁との一部始終を、扉一枚隔てた廊下で九条が見聞きしていた。キスは回避したものの、男に酔う姿を九条に見られてしまった衝撃が美夜の視界を歪ませる。
『神田が男が絡むとポンコツだってよぉくわかった。あんな場面でなければ、お前なら外の気配に気付くのになぁ?』
「それ以上言わないで。自分の馬鹿さ加減に落ち込む」
二つ隣の図書室には多くの刑事が集う対策本部が置かれている。深く考えなくても、誰に目撃されるかわからない場で個人的な関係にある男との軽率な触れ合いはタブー。
目撃者が美夜の心情に理解のある九条だっただけ、まだマシだ。
愁も廊下にいた九条の存在を知っていたなら、美夜がキスを避ける前にどうして自重しなかった?
しかもこの男は、どさくさ紛れに鎖骨の周辺にキスマークを二つもつけている。
美夜が恨めしげに睨んでも、愁は得意の澄まし顔。その憎たらしいポーカーフェイスを一発殴ってやりたい。
とにかく今は、こちら側で揉めている暇も色恋に現《うつつ》を抜かす余裕もない。
間もなく出動時刻だ。暑苦しいバディと冷淡な殺し屋を引き連れた美夜の耳には上司と繋がるインカムが、ジャケットの胸元には小型のビデオカメラを取り付け、腋の下には拳銃を装備。
爆弾のタイムリミットまで残り1時間半。
覚悟を決めた彼女達は人質一四〇〇人の命を背負って、紅椿学院高校への道を辿った。