〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
梶浦の手を離れた拳銃を回収し、太ももと肩を撃たれて悶え苦しむ彼の腰のベルトを引き抜く。周りを見渡しても、他に止血に使える物はなさそうだ。
「これ止血に使わせてもらうよ」
『痛っ……!』
「撃たれて痛いのは当たり前。それと私、煽りに乗るタイプじゃないのよね。刑事煽っていい気になっていたかもしれないけど、こっちはヤクザの相手してる暇はない」
視界に愁と九条が映った。梶浦が痛みに叫んでも、ベルトで容赦なく止血ポイントを縛る美夜を見下ろして九条は苦笑いを浮かべている。
『お前やっぱりえげつな……』
「九条くんは口の血を拭いて。その顔で雪枝ちゃんに会いにいくの?」
美夜が渡したハンカチで九条は渋々口元の血を拭う。九条がこれだけ傷付いていても、涼しげな表情の愁にはかすり傷ひとつついていなかった。
裏門到着から今までの出来事は、美夜と九条の胸元に装着した小型カメラを通して警察に記録されている。
ジョーカーの顔を見せずとも、民間人の立場で刑事と互角の戦闘能力を披露してしまった愁への嫌疑はさらに強まった。この事件が解決した後、上野一課長と百瀬警部は任意の事情聴取を愁に要請するだろう。
そうなった時、愁はどうする?
美夜はどうする?
刑事の使命と恋の狭間で彼女は揺れていた。どうしようもなく、揺れていた。
梶浦の逮捕と後始末はSITの捜査員が引き受けてくれた。確保できた犯人グループはリーダー格の滝本、飯森、梶浦、C棟にいた吉井の四名。
SIT第二部隊が間もなくB棟の制圧に入る。
A棟内で姿が確認できているのは、五階の教室にいる雪枝と宮島知佳のみ。
残るメンバーは巻田恒星と河原水穂だが、二人とも30分以上も防犯カメラの前に姿を現していない。彼らはどこに潜んでいる?
現在時刻は14時53分。タイムリミットまで残り1時間。
SIT第一部隊が、一階から順に教師と生徒の避難誘導を開始した。避難する生徒でごった返す前に昇降口を抜けた美夜達は、階段を駆け上がる。
四階から五階に上がる踊り場で美夜は足を止めた。中等部三年生の教室と生徒会室が並ぶ四階の一角には、B棟に通じる渡り廊下がある。
『どうしたんだよ』
「向こうから声が聞こえた。女の子の……すすり泣くような声」
声が聞こえた方向は生徒が閉じ込められている教室側ではなかった。渡り廊下の隣にはトイレがある。
「トイレの入り口見て。あの赤い点々とした跡、血痕じゃない?」
九条と愁も美夜の考えを察する。九条がインカムで真紀に四階トイレの異常を報告していた。
『主任の許可が降りた。まず状況を確認しろって。四階の避難誘導も待ってもらった』
この状況では教室から生徒を出せない。四階の生徒を安全に避難させるには、この階で何が起きたのか調べる必要がある。
「これ止血に使わせてもらうよ」
『痛っ……!』
「撃たれて痛いのは当たり前。それと私、煽りに乗るタイプじゃないのよね。刑事煽っていい気になっていたかもしれないけど、こっちはヤクザの相手してる暇はない」
視界に愁と九条が映った。梶浦が痛みに叫んでも、ベルトで容赦なく止血ポイントを縛る美夜を見下ろして九条は苦笑いを浮かべている。
『お前やっぱりえげつな……』
「九条くんは口の血を拭いて。その顔で雪枝ちゃんに会いにいくの?」
美夜が渡したハンカチで九条は渋々口元の血を拭う。九条がこれだけ傷付いていても、涼しげな表情の愁にはかすり傷ひとつついていなかった。
裏門到着から今までの出来事は、美夜と九条の胸元に装着した小型カメラを通して警察に記録されている。
ジョーカーの顔を見せずとも、民間人の立場で刑事と互角の戦闘能力を披露してしまった愁への嫌疑はさらに強まった。この事件が解決した後、上野一課長と百瀬警部は任意の事情聴取を愁に要請するだろう。
そうなった時、愁はどうする?
美夜はどうする?
刑事の使命と恋の狭間で彼女は揺れていた。どうしようもなく、揺れていた。
梶浦の逮捕と後始末はSITの捜査員が引き受けてくれた。確保できた犯人グループはリーダー格の滝本、飯森、梶浦、C棟にいた吉井の四名。
SIT第二部隊が間もなくB棟の制圧に入る。
A棟内で姿が確認できているのは、五階の教室にいる雪枝と宮島知佳のみ。
残るメンバーは巻田恒星と河原水穂だが、二人とも30分以上も防犯カメラの前に姿を現していない。彼らはどこに潜んでいる?
現在時刻は14時53分。タイムリミットまで残り1時間。
SIT第一部隊が、一階から順に教師と生徒の避難誘導を開始した。避難する生徒でごった返す前に昇降口を抜けた美夜達は、階段を駆け上がる。
四階から五階に上がる踊り場で美夜は足を止めた。中等部三年生の教室と生徒会室が並ぶ四階の一角には、B棟に通じる渡り廊下がある。
『どうしたんだよ』
「向こうから声が聞こえた。女の子の……すすり泣くような声」
声が聞こえた方向は生徒が閉じ込められている教室側ではなかった。渡り廊下の隣にはトイレがある。
「トイレの入り口見て。あの赤い点々とした跡、血痕じゃない?」
九条と愁も美夜の考えを察する。九条がインカムで真紀に四階トイレの異常を報告していた。
『主任の許可が降りた。まず状況を確認しろって。四階の避難誘導も待ってもらった』
この状況では教室から生徒を出せない。四階の生徒を安全に避難させるには、この階で何が起きたのか調べる必要がある。