〜Midnight Eden〜 episode5.【雪華】
美夜達のいるトイレはA棟とB棟を繋ぐ東側の渡り廊下横にある。SITが反対側の西階段から四階生徒達の避難誘導を開始したと、インカムを通じて連絡が入った。
四階までの生徒が全員避難すれば、ひとまず中等部の生徒の安全は確保された。人質の数が少なくなるほど警察は動きやすくなる。
四階から上にはまだ高等部の生徒達がいる。爆弾が仕掛けられた本陣の五階1年C組を爆破予定時刻の16時までに制圧しない限り、五階、六階、七階の生徒の避難はできない。
上野一課長の指令は、水穂をトイレから出さないこと。四階の生徒の八割が避難するまでなるべく水穂との会話を引き伸ばし、人質の安全を考慮した上での速やかな逮捕が美夜と九条に課せられた任務だ。
「私、少年鑑別所にいる弟さんに面会したのよ。数日前、勇喜くんと同じ学校に通う生徒が殺された件でね。勇喜くんのクラスメイトの紺野萌子を知ってる?」
萌子の名前が出た途端に水穂が発した狂気を含んだ笑い声に寒気がする。水穂をトイレの外に出さず尚且つ、水穂から人質を離すにはどの策が最善か美夜は模索していた。
「あのマウント女は私が殺した」
「私も萌子を殺した犯人はあなただと思った。ただの勘だったけれどね」
「勘でわかっちゃうって刑事は凄いね。どうして私が萌子を殺したと思ったの?」
「まずはあなたの家ね。あなたは萌子の殺害現場に近い、南千住のマンションに住んでいる。殺害現場付近の不審者の目撃証言がなかったのも当たり前よね。近くに住む人間なら、犯行現場周辺を歩いていても不審に思われない」
人は普段から見慣れている人物を不審者とは認定しない。南千住八丁目を構成する住宅街の住民が同じ地区の公園を出入りしていても不自然ではなかった。
近隣住民の目撃証言が出ないはずだ。住民達は確実に水穂の姿を見ているのに、水穂が見えていなかったのだから。
「次があなたの経歴。出身校が勇喜くんと萌子が在学している高校と同じ荒川第一高校だった。それも2016年3月卒業、三年生の時の担任は陣内克彦」
「あーあ。そんなことまでわかってるんだ。じゃあ私が萌子を殺した動機はわかる? 多分わからないと思うよ」
「勇喜くんが萌子の人柄を話してくれた。萌子は他人を見下す物言いや、成績が良いことへの優越感から周りの反感を買うタイプだった。萌子はあなたにも同じ行いをしたんじゃない?」
語られない萌子と水穂の接点や殺害に至るいざこざは、想像するしかない。
水穂と勇喜の姉弟、萌子と勇喜、萌子と水穂、絡み合う相関図の中心には、デリヘル嬢連続殺人事件を犯した21世紀の切り裂きジャックこと、陣内克彦がいる。
美夜が心の奥底に封じた10年前の殺意を見抜いたあの男は、暗い影を落としてどこまでも彼女を追いかけてくる。またしても陣内の教え子と対峙するとは思わなかった。
「勇喜があの事件で捕まるまで、萌子が勇喜のクラスメイトって知らなかったんだ。萌子とアプリでチャットしてる時は私もあっちも本名じゃないし、勇喜の同級生と勇喜の姉だと知らずに、私達はチャットしてた」
匿名のチャットアプリは雪枝と犯人グループを繋げた場所。要するに水穂も、勇喜の存在を間に挟んでいるとは知らずに萌子と知り合った。
二人の女のいざこざの大方の筋書きが読めてきた。
四階までの生徒が全員避難すれば、ひとまず中等部の生徒の安全は確保された。人質の数が少なくなるほど警察は動きやすくなる。
四階から上にはまだ高等部の生徒達がいる。爆弾が仕掛けられた本陣の五階1年C組を爆破予定時刻の16時までに制圧しない限り、五階、六階、七階の生徒の避難はできない。
上野一課長の指令は、水穂をトイレから出さないこと。四階の生徒の八割が避難するまでなるべく水穂との会話を引き伸ばし、人質の安全を考慮した上での速やかな逮捕が美夜と九条に課せられた任務だ。
「私、少年鑑別所にいる弟さんに面会したのよ。数日前、勇喜くんと同じ学校に通う生徒が殺された件でね。勇喜くんのクラスメイトの紺野萌子を知ってる?」
萌子の名前が出た途端に水穂が発した狂気を含んだ笑い声に寒気がする。水穂をトイレの外に出さず尚且つ、水穂から人質を離すにはどの策が最善か美夜は模索していた。
「あのマウント女は私が殺した」
「私も萌子を殺した犯人はあなただと思った。ただの勘だったけれどね」
「勘でわかっちゃうって刑事は凄いね。どうして私が萌子を殺したと思ったの?」
「まずはあなたの家ね。あなたは萌子の殺害現場に近い、南千住のマンションに住んでいる。殺害現場付近の不審者の目撃証言がなかったのも当たり前よね。近くに住む人間なら、犯行現場周辺を歩いていても不審に思われない」
人は普段から見慣れている人物を不審者とは認定しない。南千住八丁目を構成する住宅街の住民が同じ地区の公園を出入りしていても不自然ではなかった。
近隣住民の目撃証言が出ないはずだ。住民達は確実に水穂の姿を見ているのに、水穂が見えていなかったのだから。
「次があなたの経歴。出身校が勇喜くんと萌子が在学している高校と同じ荒川第一高校だった。それも2016年3月卒業、三年生の時の担任は陣内克彦」
「あーあ。そんなことまでわかってるんだ。じゃあ私が萌子を殺した動機はわかる? 多分わからないと思うよ」
「勇喜くんが萌子の人柄を話してくれた。萌子は他人を見下す物言いや、成績が良いことへの優越感から周りの反感を買うタイプだった。萌子はあなたにも同じ行いをしたんじゃない?」
語られない萌子と水穂の接点や殺害に至るいざこざは、想像するしかない。
水穂と勇喜の姉弟、萌子と勇喜、萌子と水穂、絡み合う相関図の中心には、デリヘル嬢連続殺人事件を犯した21世紀の切り裂きジャックこと、陣内克彦がいる。
美夜が心の奥底に封じた10年前の殺意を見抜いたあの男は、暗い影を落としてどこまでも彼女を追いかけてくる。またしても陣内の教え子と対峙するとは思わなかった。
「勇喜があの事件で捕まるまで、萌子が勇喜のクラスメイトって知らなかったんだ。萌子とアプリでチャットしてる時は私もあっちも本名じゃないし、勇喜の同級生と勇喜の姉だと知らずに、私達はチャットしてた」
匿名のチャットアプリは雪枝と犯人グループを繋げた場所。要するに水穂も、勇喜の存在を間に挟んでいるとは知らずに萌子と知り合った。
二人の女のいざこざの大方の筋書きが読めてきた。