パーフェクト・フィグ



雅俊は、すみれの様子から、
あの視覚障害を持っているであろう少女が、
以前すみれが話していた子だと容易に予想できた。

すみれが大阪にいた頃。

交通外傷により心タンポナーデになり、
すみれのもとに運ばれてきた少女だ。

すみれは親の同意なしに手術をし、
訴訟を起こされ、大阪で医師ができなくなった。

手術後にその子は術後合併症を発症したそうだが、
その治療が施されたのか、
生きているのか、
すみれが知ることはなかった子だ。


『今生きているのかも
 …わからない』


生きていた。

生きていたのだ。

あれから、幾つか成長したことだろう。

だが、確かに、生きている。

心臓を動かし、元気そうに笑って、
この空の下を、
すみれの見ている目の前を、
友人と仲良く歩いている。


「…ッ」


見開かれたその目に、
大粒の涙がたまっていく。

それはやがて、ゆっくりと、
まるでスローモーションのように
ゆっくりと、白い頬を伝った。



< 133 / 141 >

この作品をシェア

pagetop