パーフェクト・フィグ
雅俊は、すみれの様子から、
あの視覚障害を持っているであろう少女が、
以前すみれが話していた子だと容易に予想できた。
すみれが大阪にいた頃。
交通外傷により心タンポナーデになり、
すみれのもとに運ばれてきた少女だ。
すみれは親の同意なしに手術をし、
訴訟を起こされ、大阪で医師ができなくなった。
手術後にその子は術後合併症を発症したそうだが、
その治療が施されたのか、
生きているのか、
すみれが知ることはなかった子だ。
『今生きているのかも
…わからない』
生きていた。
生きていたのだ。
あれから、幾つか成長したことだろう。
だが、確かに、生きている。
心臓を動かし、元気そうに笑って、
この空の下を、
すみれの見ている目の前を、
友人と仲良く歩いている。
「…ッ」
見開かれたその目に、
大粒の涙がたまっていく。
それはやがて、ゆっくりと、
まるでスローモーションのように
ゆっくりと、白い頬を伝った。