パーフェクト・フィグ
秋風が、頬を撫でる。
気持ちのいい、風が吹く。
「…泣き虫」
すみれは服の袖で涙を拭いた。
「そう思ってるんでしょ」
「…あぁ」
「…」
少女が通りの角を曲がっていく。
その姿を見届けたすみれの表情は、
この空よりも晴れやかになっていた。
「初めて思った。
医者続けててよかったって」
「…フッ」
「あ!笑ったな」
「あぁ」
雅俊はすみれの柔らかい髪をくしゃっと撫でた。
「なっ!」
驚いて一歩引くすみれを見下ろして、
雅俊は思わず頬が緩んでいた。
「いい意味で、な」
「なにが」
「なんでもない」
そう言って先を歩くと、
後ろからトコトコと駆け寄ってくる。
こんなに表情筋が言うことを聞かないのは、
いつぶりだろうか。
雅俊は絶対にすみれに顔を見られないように、
足早に駐車場へ向かった。