パーフェクト・フィグ



「その子は視力障害があって、
 目が全く見えていなかった。

 親の話を聞いてすぐにわかった。
 なぜ交通事故にあったのか。
 親がいたすぐそばで、
 盲目の上の子は赤信号を渡ってトラックと接触、
 下の子は親と手を繋いでいて無傷…」


両親は神妙な面持ちだったが、
意識のない子どもに声をかけようともしない。

ただ、すぐに緊急手術の必要があることを
すみれが説明すると、
両親は首を横に振った。

まるで、余命幾ばくもない、
ずっと病気と闘ってきたかのような顔をして。


『手術は、いいんです。
 もう、これ以上、
 辛い思いをさせたくないんです。
 体に傷ができるのも、可哀そうで…』


「笑っちゃった」


すみれは微かに鼻で笑った。


「"子供の体に傷をつけたくない"とかいう
 ふざけた理由で手術を望まない親に、
 無性に腹が立った」


言い方こそ静かだったが、
怒りと呆れが、その声に籠っていた。


「だから、勝手に開胸して、オペしたの」


親の同意のない、治療だった。



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