パーフェクト・フィグ



「損得で医者してない」

「わかってる」

「わかってない」

「…」

「…君にはわからない」


すみれが足をぶらつかせ、
勢いよく立ち上がった。

もういい。

そう言っている気がした。

すみれはいつものように
ふらふらと歩き出した。


「…わかった」


人と話すのは得意じゃない。

いつも、上手く伝わらない。

でも今は、
それではいけないのだろう。

雅俊は今にも暗闇に消えていきそうな
すみれの背中に向かって言った。


「俺が…止めてやる」


足を止めたすみれが、
振り返って小さく首を傾げた。

雅俊は構わず続けた。


「お前がまた暴走しようとしたら、
 俺が止めてやる。

 見ててやるから、
 お前はお前らしくまたやっていけばいい」

「ぇ…」


すみれは大きな目を、
更に大きく見開いた。


< 49 / 141 >

この作品をシェア

pagetop