青の葉の、向かう明日。
私は腕に力を込めて咄嗟に清澄くんから離れた。

そうしてしまったのは、きっと…。


「江波くん、か。メリークリスマス」


清澄くんは全く動じていなかった。

むしろ私や江波くんの方が動揺してしまっていた。

何か…

何か言わなきゃ。

そう頭では分かっていても身体が言うことを聞かない。

そうしてしばらくの沈黙の後、ザッとアスファルトを蹴る音が聞こえ、私は顔を上げた。

足音がだんだん大きくなる。

目を瞑る。

どうせ辛い思いをするだけでしょう。

ならいっそ…

時が止まればいいのに。

そんなバカなことを思った。


「有」


江波くんの声がした。

私に向けられた言葉も視線も今は受け止めたくない。

胸がズキンと痛い。

なのに江波くんは続ける。


「話がしたい。少しだけ時間もらってもいいかな?」


首を横にも縦にも振れずにいると、後ろから助け舟が流れて来た。


「いいよ。おれはもうありすに色々伝えられたし。ちゃんと2人で話し合った方がいい。って、第三者のおれが言うことでもないと思うけど」

「ありがとう、清澄。…ってことだから、有もそれでいい?」


私はゆっくりと首を縦に振った。

じゃあ、と右手を挙げると勢いよくサドルに跨がり、清澄くんは風を切って走り出してしまった。

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