青の葉の、向かう明日。
「あのさ、有」


江波くんが勇気を出して先に口を開いてくれたのに、私は顔を上げられない。

どんな顔を繕えばいいのか、

どんな視線を送ればいいのか、

今の私には分からないんだ。

だから…


「ごめん。今まで本当に…ごめん」

「そんな…謝らないでよ。私が悪いんだから。私は大丈夫だから」

「違う。…違う、よな。俺分かるよ。有が強がってそういうこと言うの、もう分かってるから。本当はなんにも悪くない。大丈夫でもない。そうだよな?」


何を今さら…

今さら、そんなこと言われたって、

私…

やっぱり

どう答えたらいいか

分かんない、よ…。


「分かん、ない。何も分かんない。だってもう終わったことで…だから話したって何も…」

「分かんないなら、有が分かるように話す。俺も言葉足らずなとこあるけど、有はそれ以上だから。厄介だよな、俺たち。似てるようで似てないし、似てないようで似てる。だから、面白い。一緒にいて楽しい」

「楽しいわけ、ない…。だから私から離れたんでしょ?そもそも私が一方的に江波くんのことが好きで、私に告白されて断れなかったから仕方なく付き合っただけで江波くんは私のこと好きじゃない。そのくらいは分かるよ」


江波くんが激しく首を真横に振る。


「えっ?」

「有にこんな顔させて、こんな風に思わせるなんて、さ。俺、ほんと何も伝えられてなかったんだな。…ごめん。謝っても許されないって分かってるけど謝らせてほしい。本当にごめんな。それと、俺は有のこと振ったわけでもない。今も昔も変わらず…好きだ。大好きだ」

「す、き…?」

「あの日は気が動転して有に誤解されるようなこと言ったのかもしれないけど別れたいとは言ってない。あれからも俺は深沢さんの病院を訪ねたり演劇部員から話聞いたりして有が悪いんじゃないって証拠を集めてたんだ。無条件に信じて側にいてあげられなくて…俺有の彼氏失格だ。だけど、それでも…気持ちはぜんっぜん変わってない。俺は有が大好きだ。どんな有もただ…ただただ愛おしい。こんなバカな俺で申し訳ないけど、それでも良ければ…なんてのは柄じゃないな。有の隣が相応しい男になるから、だから…江波くんなんて他人行儀はやめて、さ。また晴くんて呼んでくれよ。有がそう呼んでこっち見て笑ってくれるだけで、俺幸せだから」
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