青の葉の、向かう明日。

モノローグ

ーー授業終わったら東階段の踊り場に来て。

ーー聞きたいことがある。


事件のあと、鳴海有に送られて来た最初のメッセージは彼氏からだった。

救急車まで来てしまったものだから校内中の噂になっている。

有は朝から晩までほぼ1日中ありとあらゆる人から尋問を受けていた。

どうして突き落としたのか。

なぜ深沢明だったのか。

情状酌量の余地があると思われるよう、有はきちんと証拠を提示し、一瞬も気を抜かぬよう全身に意識を巡らせて真摯に対応した。

そのせいもあってか先生や警察官からは注意をされただけで警察署送りにはならずに済んだ。

それに深沢明も命に関わる大きな怪我を負ったわけでもなかったようだし、大きな問題とも思えなかったようだ。

ただの喧嘩。

その延長。

やり過ぎてしまっただけ。

そう思われたのだろうと有は結論づけていた。

けれど、周りはそうではない。

分かってなんてくれない。

状況が状況だから、一方的に有が悪いことになっている。

本当は私は盗作されてそれを問い詰めたら勝手に下に転がっていった、なんて話は恐らく誰も信じない。

でも、いい。

クラスメイトとの関係はもう間も無く終わるから大丈夫。

そう思えた。

だが、どうしても諦められないことがあった。

それは、作品だ。

年明け〆切のコンクールに出品しようとしていたものが盗作され、先に劇で発表されてしまった。

学園祭の劇だから大丈夫という問題ではない。

学園祭の様子は動画サイトにアップされてしまって概要欄には脚本を担当したのが誰なのか名前が記載されている。

有は動画の削除を頼んだが、たとえすぐ削除されたとしても既に世に出回ってしまっている。

どこで目につくかは分からない。

それが出版社の目に入ってしまったら…

終わりだ。

有はやりきれない感情を抱えたまま、約束の場所へと向かった。


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