青の葉の、向かう明日。

踏み出した、先に

2月15日。

私と晴くんは電車に揺られ都内にある大学のキャンパスまで来ていた。

昨日がバレンタインならば、今日は合格発表の日だ。

自分で言うのもなんだけど、幸せの絶頂から奈落の底に落ちるなんてことがないことを祈る。

結果発表は午後2時。

腕時計を何度もちらちら見てしまう。


「大丈夫だって。ほんと、有は心配性だよな。それより受かった時のことを考えよう。どこに住もうかなぁとか、学食美味しいかなぁとか」

「うちの学食美味しいですよ」

「えっ?」


ほとんど晴くんの独り言みたいだったのに、聞きつけてしまったのか恐らくここの学生さんと思われる女性に話しかけられた。


「あはは。すみません、お邪魔しちゃって。あ、でも本当に学食美味しいんですよ。特にカツ丼が。それにうちはサークル活動も盛んでね、あたしは報道サークルの2年で…あったあった、名刺名刺っと。はい、どうぞ。春にまた会えるの楽しみにしてるね。…あ、やば!行かなきゃっ!受かるよ、君たち!良い目してるから!んじゃあ、バイバーイ!」


彼女は台風の如くやって来ては去っていった。


「なんか面白い人だったね…」

「なんか名前も面白い。御手洗千(みたらいゆき)って読むのか?」

「うん。たぶん、そうだよね」


なんて話していると周りがざわつき始めた。

気づいた時にはボードに紙が貼られ始めていて受験生たちが自分の番号を探していた。

私は、1572番。

1572、1572、1572…。


「あ…あった!俺、あったよ、有!」

「お、おめでとう…。わ、私は…」

「1572ならさっき…。有、あそこ!」


晴くんが指差した先には…


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