青の葉の、向かう明日。
4

生きる、意味

受験当日。

柄にもなくあたしは緊張していた。

いや、柄にもなくは嘘。

もともとあたしは小心者で緊張しい。

小1の時のピアノの発表会で自分の出番の直前でお腹が痛くなってトイレに駆け込み、あたしは時間までにステージに向かうことが出来なかった。

そのことを先生にこっぴどく叱られ、後に除籍させられた。

あれから鍵盤には一度も触れていない。

というより指が震えて演奏どころではない。

ちょっとしたトラウマなんだ。

だから鍵盤ハーモニカの授業なんてあると終わりのお知らせだった。

歌は歌えても鍵盤ハーモニカやピアノが全く出来ないから音楽の評価が2まで落ちた時もある。

それだけじゃない。

小学生の時ってやたらと行事があるけれど、年齢が上がるに連れて誰かに見られているっていう意識が芽生え、それが増幅し、あたしはどんどんポンコツになっていった。

授業参観は座っているだけで疲れ、翌日学校に行けなくなるほどで、

運動会やマラソン大会では身体が思うように動かなくてコケたり、

学芸会では本番直前になって案の定腹痛を起こし役を交代してもらったり、ちゃんと舞台に立てたはいいけどセリフがぶっ飛んでナレーションの子が代わりに言ってくれたり。

あたし、とんだチキンなんだよね。

そんなあたしの心のよすがが読書だった。

あたしは小難しい本が苦手で専ら児童書を読み耽っていた。

本の向こうの登場人物たちが困難を乗り越えていく様を見る度に自分はダメなやつだと思っていたけど、中にはあたしと似たような属性の子もいてすごく励みになっていた。

こんなあたしでも生きてていいんだ。

そう思えた。
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