青の葉の、向かう明日。
「番号見せて」

「えっ、あ、うん」


私は受験票を差し出した。


「やっぱりそうだ。深沢とおれ、席前後。空いてるあそこの2つ」

「え?なんで?出席番号順じゃ…」

「そうでもないみたい。ほら、あそことか他クラス混ざってるし。良かったじゃん。クラスの中にいると、アンタ息苦しそうだったから、ちょっと安心じゃない?」


あたしはこくりと頷いた。

彼はそんなあたしを見て何が面白かったのか皆目見当もつかないが、歯を見せて笑った。


「受験なんて最後は運だ。これまで積み重ねてきたものが発揮出来るかどうかは神様の気まぐれ。だからそんな気負う必要ない。深沢はそれなりにちゃんとやって来たでしょ?人事を尽くして天命を待つ。まさにこういう時のためにある言葉だとおれは思うけど」


なぜだかいつもの何倍もポジティブで頼もしく思える。

この人もあたしと同じ部類だから、それを克服するために色々策を講じた結果こうなったのだろう。

それが手に取るように分かる。


「アンタが自分を信じられないっていうならさ、おれが信じるから。おれ、そういうの得意だから」

「ぷふっ。なにそれ」


思わず笑みが溢れた。

彼もまた微笑む。


「ありがとう。さっくんのお陰で元気出た」

「いや、あのさ、誰もそんな呼び方してなんて言ってないけど」

「えー何?あたし超全力集中モードだから聞こえなーい」

「…うざ」


軽口を叩いていたのに数秒後には2人ともお口をチャックして席に着いた。

あたしの目の前には清澄朔の背中が広がっている。

その背中を見れば自然と波立っていた心が凪いでいく。

ありがとう、神様。

あたし、頑張れそう。

嘘でも冗談でもいい。

信じるって言ってくれたから。

あたしの…

大切な人が。

諦めないから、

最後まで耐え抜くから、

だからお願い。

あたしにもう一度チャンスを下さい。

そう心の中で願い、開始のチャイムが鳴るのを待った。
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