青の葉の、向かう明日。
一気に静まり返り、あと一人残っていたことをあたしは忘れてかけていた。


「おれからも言いたいこと、あんだけど」

「あ、うん。どうぞ」


隅っこで息を潜めていた彼がコツコツとローファーを鳴らし、こっちに近づいてくる。

そういえば、制服だ。

今さら気づいた。


「さっき謝ったよな、ごめんって」

「うん。だって迷惑かけちゃったから…」

「迷惑かける、心配かけるって分かってるんだったら最初からそんなことしちゃダメだ。君の家族の顔見たでしょ?皆君のことを本当に大事に思ってるから悲しむし、怒りたくもなるんだよ。君は君が思ってる以上に大事にされてる。家族から愛されてる。それだけでもうちゃんと生きてるんだよ。生きる意味があるんだよ。君は君のことを大事にしてくれる家族からの愛を受け取る義務がある。それは生きることでしか成し得ない。だから、君は生きるんだ。死ぬなんて選択を何度もするな…!」


ごめん、と言いかけてあたしは口をつぐんだ。

それも今は決して言ってはならないと思った。

あたしの言葉が彼をより一層傷つけてしまう。

そう、分かったから。

ガラガラとナースさんが医療機器を持って移動する音、

薬品の香り、

患者さんと家族の会話…

その全てを感じられてしまっているのは紛れもなくあたしのせい。

でもそれを悔いることは出来ない。

生きること。

辛くても苦しくても何もかも嫌になっても生きること。

そうすることでしか償えないなら、

あたしは…生きる。

覚悟を決めて、生きる。


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